高台寺
本文約6,400字 ・ 読了時間 約13分
あらすじ(AIが作成しました)
都おどりを観劇する章子とひろ子は、出演する舞妓の桃龍や里栄と交流し、彼女たちの性格の差異や京都特有の生活文化を目の当たりにする。その後、高台寺の蒔絵や登龍の階を見学し、歴史的な工夫や周囲の景観に触れながら京都の文化を体感する。金魚屋や円山の公園で遊ぶ桃龍たちの自由奔放な振る舞いに触れ、彼らは休日らしい寛いだ雰囲気を共有していく。
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三等の切符を買って、平土間の最前列に座った。一番終りの日で、彼等の後は棧敷の隅までぎっしりの人であった。一間と離れぬところに、舞台が高く見えた。
やがて囃が始り、短い序詞がすむと、地方から一声高く「都おどりは」と云った。
「よういやさ」
揚げ幕の後で一種異様にちりぢりばらばらのような刺戟的な大勢の掛声がそれに応える。同時に、左右の花道から、鼓、太鼓、笛、鉦にのって一隊ずつの踊り子が振袖をひるがえして繰り出して来た。彼方の花道を見ようとすると、もう此方から来ている。華やかな桃色が走馬燈のように視覚にちらつき、いかにも女性的な興奮とノンセンスな賑わいが場内を熱くする。――
一列に舞台の上できまり、さて桜の枝をかざして横を向いたり、廻ったり、単純な振りの踊りが始ったが、その中から顔馴染を見出すのは、案外容易でなかった。花道を繰り出して来た時、おやあれかと思い、熱心に近づく顔を見守ると別人だ。左の端から五人目のおどり子が、踊りながら頻りに此方を見、ふっとしなをする眼元を此方からも見なおしたら、それが桃龍であった。やんちゃな彼女が、さも尤もらしく桜の枝を上げたり下げたりしているのがおかしく、彼等はひとりでに笑えた。彼女も、舞台の上でくるりと廻る拍手に何喰わぬ顔で彼等に向い舌を出した。ずっと上手に、まるで知らない顔に挾まれ、里栄が一人おとなしく踊っている。
昼間、里栄が、
「今日出番どすさかい、是非来とおくれやっしゃ」
と云った。桃龍も居合わせ、
「きっとどっせ、好う好う左の花道見といやっしゃ」
と云ったが、自分一人になった時、
「ほんまに間違えてお座りやしたらあきまへんえ、左の花道のねきいお座りやっしゃ」