呉清源
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あらすじ(AIが作成しました)
呉清源の対局を観戦し、その棋士としての姿勢を論じる。一匹の虫を相手にする際も全力を注ぐ徹底した真剣さと、対局中には感情や他人の思惑を排する冷徹なまでの非人間的な執念を描く。棋士が自己の限界という逃れられない苦悩と対峙する中で、信仰に救いを求める天才の宿命についても考察を深め、他の棋士とは一線を画す、勝負に徹する機械のような正確さと迫力を浮き彫りにする。
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私は呉清源と二度しか会ったことがない。この春、月刊読売にたのまれて、呉清源と五子で対局した。五子は元々ムリなのだが、私も大いに闘志をもやしたせいか、呉氏を攻めて、呉氏の方が私よりも長考するような場面が現れ、こう考えられては、私の勝てる筈はない。アッサリ打棄られたが、私のヘボ碁には出来すぎた碁で、黒白童子や覆面子を感心させ、呉氏もほめていたそうだ。
この時も、然し、私は驚いた。私が呉氏の大石を攻めはじめてからの彼の態度が、真剣で、その闘志や入念さ、棋院の大手合の如くであり、一匹の虫を踏みつぶすにも、虎が全力をつくすが如くである。相手が素人だというような態度はない。その道の鬼、むしろ、勝負の鬼という、一匹の虫を踏みつぶすにも、すさまじい気魄にみちたものであった。
二度目に会ったのも、読売の主催で、本因坊呉清源十番碁の第一局、私は観戦記を書いた。
対局場は小石川のさる旅館だが、両棋士と私は、対局の前夜から、泊りこむことになっていた。
本因坊と私は、予定の時刻に到着したが、呉八段が現れない。呉氏の応援に、ジコーサマが津軽辺から出張して、呉氏の宿に泊りこんだ由であるが、あたり構わぬオツトメをやり、音楽、オイノリ、そのうるさゝに家主が怒って、警察へ訴え、ジコーサマの一行が留置されてしまったのである。呉氏が警察へ出頭してジコーサマ一行を貰い下げた。それがこの日の前夜のことで、一行はネグラを求めて、いずこともなく立ち去った。そのまゝ、消息が知れないのである。