「和尚さん。大変でございます」
と云って飛びこんできたのは、お寺の向いの漬物屋のオカミサンであった。
「何が大変だ」
「ウチの吾吉の野郎が女に惚れやがったんですよ。その女というのが、お寺の裏のお尻をヒッパタかれたあのパンスケじゃありませんか。情けないことになりやがったもんですよ。私もね、吾吉の野郎のお尻をヒッパタいてくれようかと思いましたけどネ。マア、和尚さんにたのんで、あの野郎に説教していただこうと、こう思いましてネ」
「あの女なら、悪いことはなかろう。キリョウはいゝし、色ッぽいな。すこし頭が足りないようだが、その方が面白くて、アキがこないものだ」
「よして下さいよ。私ゃ、パンスケはキライですよ。いくらなんでも」
「クラシが立たなくては仕方がない。パンスケ、遊女と云って区別をすることはないものだ。吾吉にはそれぐらいで、ちょうど、よいな」
「ウチの宿六とおんなじようなことを言わないで下さいよ。男ッて、どうして、こうなんだろうね。女は身持ちがキレイでなくちゃアいけませんやね。ウチノ宿六の野郎もパンスケだっていゝじゃないか、クラシが立たなくちゃアほかに仕方があるめえ、なんて、アン畜生め、いゝ年してパンスケ買いたいに違いないんだから。覚えていやがれ。和尚さんも、大方、そうでしょうネ。まったく、呆れて物が言えないよ」
「だから拙僧に頼んでもムダだ。私だったら二人を一緒にしてしまうから、そう思いなさい。罪なんだ」
「なにが罪ですか。いゝ加減にしやがれ。オタンコナスめ。けれども、ねえ。お頼みしますよ。吾吉の野郎をよこしますから、本堂かなんかへ引きすえて、仏様の前でコンコンと説教して下さいな」
こういうワケで、和尚は吾吉と話をすることになったのである。
「お前、裏の女の子と交ったかな」
「ハ。すみません」
「夫婦約束をしたのだな」
「イエ。それがどうも、女がイヤだと申しまして、私は気違いになりそうでございます。私があの女にツギこんだお金だけが、もう三十万からになっておりますんで。いッそ、あのアマを叩き斬って、死んでくれようか、と」