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TORENDIA

政治に関する随想

本文約5,500字 ・ 読了時間 約11分

あらすじ(AIが作成しました)

病床に伏す著者が、戦後の民主化における政治と国民の意識を論じる。かつて支配階級が国民を無視し続けた欺瞞政治を批判し、現在は真の民主的な変革の過渡期にあると説く。国民の政治意識の低さが劣悪な候補者を生んでいると分析し、真の民主主義の実現には民衆自身による政治教育の徹底と、利他的な道徳理念の根幹を「自利」へ転換する道徳的刷新が不可欠であると主張する。

伊丹万作

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🎧 政治に関する随想 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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私は生れてからこのかた、まだ一度も国民として選挙権を行使したことがない。

私はそれを自慢するのではない。むしろ一つの怠慢だと思つている。しかし、ここに私が怠慢というのは、私が国民としての義務を怠つたという理由からではなく、たんに芸術家として、与えられた観察の機会をむだにしたという理由からである。すなわち、いまだかつて投票場に近寄つたこともない私は、投票場というものがどんな様子のものかまつたく知らない。したがつて作家としての私は投票場のシーンを描写する能力がなく演出家としての私は投票場のシーンを演出する能力がない。そして、それは明らかに私の怠慢からきている。このような意味においては私は自己を責める義務があるが、その他の意味においては少しも自己を責める義務を感じたことがないし、今でも感じていない。

「選挙は国民の義務である」ということは、従来の独裁政治、脅迫政治のもとにおいてさえ口癖のようにいわれてきたが、そのような政治のもとにそのような言葉が臆面もなく述べられていたということほど、国民を侮辱した話はない。

選挙が国民の義務であるためには、その選挙の結果が多少でも政治の動向に影響力を持ち、ひいては国民の福祉に関連するという事実がなくてはならぬ。そんな事実がどこにあつたか。

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