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TORENDIA

思い

本文約4,300字 ・ 読了時間 約9分

あらすじ(AIが作成しました)

映画の改革案発表を機に、著者は失業に直面する映画人たちの苦境を綴る。経営陣の利益優先の姿勢や当局の傍観的な態度を批判し、現場を支える従業員の良心が無視されている現状を論じる。また、娯楽文化の質が映画の質を規定すると主張し、一部の専門家による諮問だけでは解決困難な問題の根深さを指摘する。映画界の苦境に対し、監督同士の連携の必要性と、制作者の権利保護を強く訴える。

伊丹万作

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🎧 思い / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ

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寝台の上で、何を思いわずろうてみてもしようがないが、このたびの改革案が発表されたときは、やはり強くなぐられたような気がした。自分一個の不安もさることながら、それよりもまず、失業群としての、大勢の映画人の姿が、黒い集団となつてぐんと胸にきた。痛く、そしてせつない感情であつた。しかし寝ていてはどうしようもない。もつとも起きていても、たいしてしようはないかもしれぬが、一人でも犠牲者を少なくしてもらうよう、方々へ頼んでまわるくらいのことならできる。ただし、私が頼んでまわつたとてあまり効果はないかもしれないが、それでも寝たまま考えているよりはいくらかましであろう。

最初改革の基本案が発表せられてから、もう二週間以上にもなるかと思うが、いまだに成案の眼鼻がつかず、それ以来やすみつきりの撮影所もある。何も好んで休んでいるわけではないが、提出するどのシナリオも許可されないため、仕事のしようがないのだそうである。この許可されないシナリオの中に、どうやら私の書いたものもまじつているらしいので、これは何とも申しわけない話だと思つている。

実行案の成立が、いつまでも実現しない理由は、各社の代表が、互に自社の利益を擁護する立場を脱しきれないためと、いま一つには当局の態度がいささか傍観的にすぎるためらしい。

各社代表が、利益から離れられないのは、むしろ当然すぎることであつて、少しもこれを怪しむ理由はない。彼らは一人々々切り離して観察すれば、おそらくいずれも国民常識ゆたかな紳士なることを疑わないが、一度、会社の代表たる位置に立たんか、たちまち利益打算の権化となるであろうことは決して想像に難くない。彼らの背には、多くの重役、株主、会社員がおり、しかも、彼らの代表する会社はもともと利益を唯一の目的として成立したものであつてみれば、彼らが利益を度外視して、真に虚心坦懐に事をはかるというようなことは、実際問題として期待し得べきことかどうか、はなはだ疑なきを得ない。

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