いぼ
本文約10,500字 ・ 読了時間 約21分
あらすじ(AIが作成しました)
松吉と杉作の兄弟は、夏休みに従兄の克巳と遊び、池で危機を共に乗り越えて絆を深める。後日、町へ克巳を訪ねるが、都会の生活に馴染んだ克巳から冷淡な態度をとられ、二人は失望して帰路につく。道中、寂しさを埋めるように大砲の真似事を叫びながら、兄弟はこれからの人生で直面するであろう悲しみを乗り越えていく強さを抱き、家へと帰っていく様子を描く。
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一
にいさんの松吉と、弟の杉作と、年もひとつちがいでしたが、たいへんよくにていました。おでこの頭が顔のわりに大きく、わらうと、ひたいにさるのようにしわがよるところ、走るとき、両方の手をひらいてしまうところも同じでした。
「ふたり、ちっとも、ちがわないね。」
と、よく人がいいました。そうすると、にいさんの松吉が、口をとがらして、虫くい歯のかけたところからつばをふきとばしながら、いうのでした。
「ちがうよ。おれにはふたつもいぼがあるぞ。杉にゃひとつもなしだ。」
そういって、右手の骨ばったにぎりこぶしを出して見せました。見ると、なるほど、親指と人さし指のさかいのところに、一センチぐらいはなれて、小さいいぼがふたつありました。
この兄弟の家へ、町から、いとこの克巳が遊びにきたのは、きょ年の夏休みのことでした。克巳は、松吉と同い年の、小学校五年生でした。
克巳は五年生でも、からだは小さく、四年生の杉作とならんでも、まだ五センチぐらい低かったが、こせこせとよく動きまわる子で、松吉、杉作の家へくるとじき、はつかねずみというあだ名をつけられてしまいました。
松吉、杉作の家のうらてには、ふたかかえもあるニッケイの大木がありました。その木の皮を石でたたきつぶすと、いいにおいがしたので、おとなたちが、昼ねをしている昼さがりなど、三人で、まるできつつきのように、木のみきをコツコツとたたいていたりしました。
また、あるときは、おじいさんの耳の中に、毛がはえていることを克巳が見つけて、
「わはァ、おじいさんの耳、毛がはえている。」
とはやしたてたことがありました。松吉、杉作は、もうずっとまえから、そんなことは知っていました。が、あまり、克巳がおもしらそうにはやしたてるので、いっしょになってこれも、
「わはい、おじいさんの耳、毛がはえている。」
と、はやしたてたものでした。すると、おじいさんが、松吉、杉作をにらみつけて、
「なんだ、きさまたちゃ。おじいさんの耳に、毛のはえとることくれえ、毎日見て、よく知ってけつかるくせに。」
と、しかりとばしました。そんなこともありました。