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TORENDIA

空中に消えた兵曹

本文約1,500字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

横須賀航空隊のN大尉とS中尉は、偵察飛行の帰路、箱根上空で激しい揺れに遭遇する。雲を抜けた後、S中尉の同乗者であったM兵曹が機体から姿を消していることに気づく。懸命な捜索も虚しく行方は判明せず、S中尉は深い憂鬱に沈むようになる。その後、飛行中に姿を見せるM兵曹の幻影に苦しみ、一年後、訓練中に再びM兵曹の姿を目撃したS中尉は墜落事故を引き起こす。本書は、消えた兵曹の謎とそれに翻弄される男たちの姿を描く。

田中貢太郎

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🎧 空中に消えた兵曹 / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ

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大正七八年比のことであった。横須賀航空隊のN大尉とS中尉は、それぞれ陸上偵察機を操縦してA飛行場に向けて長距離飛行を行い、目的地に到著して機翼をやすめるひまもなく、直ちに帰還の途についた。

両機は一千米の高度を保ちながら雁行していたが、箱根の上空にさしかかったところで、密雲のために視界を遮られたうえに、エアーポケットに入って機体が烈しい勢いで落下した。そして、二百米ばかりも落下して、やっと危険を脱したので、N大尉はやや安心して僚機の方を見たが、僚機の姿は見えなかった。

N大尉は己でも危険に遭遇しているので、もしや彼の時にどうかしたのではないかと思ってS中尉の身の上を心配しいしい帰って来た。それで著陸するなり、機体の手入れも忘れて西の方ばかり見ていた。と、二十分ばかりして僚機の姿が夕暮の空に見えて来た。N大尉はほっとして僚機の著陸するやいなや駈けて往って、S大尉[#「S大尉」はママ]の手を執った。

「おめでとう、やられたろう」

「やられた、君もか」

「そうだ」

それからS中尉は後の方を見た。それは同乗のM兵曹に声をかけるためであった。が、そこには何人もいなかった。

「おや」

みるみるS中尉の顔色がかわった。N大尉も気が注いた。

「M兵曹か」

「そうだ」

「どうしたのだ」

「さあ」

「どこからいなくなったのだ」

「箱根へかかるまでは確かにいたのだが」

「それはたいへんだ」

航空隊の方ではM兵曹の行方を捜索したが判らなかった。その一方でS中尉は、すっかり憂鬱になって平常の快活さを失った。そして、夜など歩いていると、往きちがった人の顔がM兵曹の顔に見えたり、又飛行機に乗ろうとして、機体に手をかけようとして見ると、同乗の練習生の顔がM兵曹に見えたりした。

それは冬の微曇のした日のことであった。S大尉[#「S大尉」はママ]が格納庫の中で機体の手入れをしていると、飛行服を著たS中尉が顔色をかえて飛んで来て、

「M兵曹がおれの機に乗ってたのだ」

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