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TORENDIA

棄轎

本文約630字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

上州の田舎で、畑仕事からの帰路にあった農夫が、路傍の松の木の下に捨て置かれた金銀の金具を施した轎を見つける。興味本位で轎の垂れをあげた農夫は、中に座るお姫さまのような女の姿を目にする。しかし、女が顔を向けた瞬間、農夫は眼も鼻も口もないのっぺらぽうの異様な形相を目の当たりにし、恐怖に包まれる。時を同じくして、離れた村の農夫も同様の轎と、中のお姫さまの正体に出くわす怪異を描く。

田中貢太郎

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🎧 棄轎 / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

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上州の田舎の話である。某日の夕方、一人の農夫が畑から帰っていた。それは柄の長い鍬を肩にして、雁首を蛇腹のように叩き潰した煙管をくわえていた。そして、のろのろと牛のように歩いていると、路傍の松の木の下に異様な物を見つけた。

「ほう」

それは見る眼にも眩しい金と銀の金具をちりばめた轎であった。

「諸侯の乗るような轎じゃねえか」

それにしても、轎夫もいなければ伴の者もいない。まるで投げ棄ててでもあるように置いてあるのが不思議でならなかった。轎の中はひっそりとしていて、何人も乗っていそうにないし、見ている漢もないので、轎の傍へ寄って往って垂れをあげた。垂れをあげて農夫は驚いた。轎の中にはお姫さまのようなな女がいた。

「これは、どうも」

農夫はあわてて垂れをおろそうとしところで[#「おろそうとしところで」はママ]、女がちらとこっちを見た。同時に農夫はのけぞった。

「わ」

それは眼も鼻も口もないのっぺらぽうの顔であった。農夫は転げるように逃げ帰ったが、それから病気になって死んでしまった。

その農夫が怪しい轎を見た日のこと、それから数分と経たない時刻に、その村からよっぽど離れた村の農夫が、これも畑から帰っていると、路傍に金と銀の金具のある轎があった。不思議に思って垂れをあげて見ると、中にお姫さまのような女がいた。そして、驚いて垂れを下ろそうとしたところで、女が顔をあげたが、それもやっぱりのっぺらぽうであった。で、その農夫も仰天して逃げ帰ったが、これも病気になって死んでしまった。

完

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