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TORENDIA

谷丹三の静かな小説

本文約6,000字 ・ 読了時間 約13分

あらすじ(AIが作成しました)

現実への退屈やシニシズムに抗い、生きる喜びを追求する著者が、友である谷丹三の芸術観を論じる随筆である。谷の文学において重視されるのは、観察と実験、そしてそれらを導く思想の光である。虫の微細な描写であれ、平凡な風景であれ、確かな思想に裏打ちされた真実の観察こそが芸術を成立させる。著者は、苛酷で醜悪な現実を直視しつつ、その底にある宝石のような輝きを写し出そうとする谷の姿勢に深い共感を示し、その創作活動への期待を綴る。

坂口安吾

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🎧 谷丹三の静かな小説 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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私は祖国日本にいささか退屈を感じてゐる。とはいへ、日本人であることを如何ともなしがたい私にとつて、これは憂鬱な出来事である。いはば、私は私自身に退屈してゐるに違ひないといふ因果なふしあはせを自白しなければならないのである。

私はシニスムがきらひである。

人に自慰的な優越を与へる点に於てはシニスムほど強力なものはないかもしれない。シニスムを生活の武器とする限りは、人はかなり堅固な城壁の中で相当気楽な一生が送れるかもしれない。けれど、お前が太陽であるならば、お前はきつといつも日蝕の中にゐるのだらう。そして、シニスムの静寂と優越は甚だ貧困なものだと私は考へてゐる。大人げないと侮られてもかまひやしない。笑ひ泣き生き生きと悲しむ方がきつと豪華なことだらう。

お前は甘いぞと言はれることが、我々日本人にとつては骨身にこたへる一大苦痛であるらしい。けれど、行為の世界では人は大概あまいのである。あまくないのはお前の考への中でだけだ、不遜な頭の中でだけだ。そして、日本人の小説はあまくないことをのみ示威するために書かれたやうに大概あまくないものである。

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