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TORENDIA

かげろふ談義

本文約7,400字 ・ 読了時間 約15分

あらすじ(AIが作成しました)

著者から知人へ宛てた手紙形式で、古典『松浦宮物語』のあらすじや、物語を愛でる人々の心情を綴る。七歳で天才と称された参議氏忠が遣唐使として唐へ渡り、皇帝の妹・華陽公主と仙人の秘曲を介して結ばれる恋物語を解説する。あわせて、プルーストの私生活や狂言の独白を引用しつつ、作者の伝記や性格を知る必要のない、読み手にとっての真の物語とは何かを論じる。随所に逸話や歌を交え、文学と日常の結びつきを軽妙な筆致で語る一編である。

坂口安吾

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🎧 かげろふ談義 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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二ヶ月ばかりお目にかかりませんが、御元気のことは、時々人づてにきいてゐました。さて、僕は今日、人々は笑ふばかりで、とりあつてくれさうもないことに就いてお喋りしたくなりましたので、君にあてて話しかける必要にせまられました。

東路の道のはてよりも、なほ奥つかたに生ひ出でたる人、いかばかりかはあやしかりけむを、いかに思ひ始めけることにか、世の中に物語といふもののあんなるを、いかで見ばやと思ひつつ、徒然なるひるま、よひゐなどに、姉継母などやうの人々の、その物語、かの物語、光源氏のあるやうなど、ところどころ語るを聞くに、いとどゆかしさまされど、わが思ふままに、そらにいかでか覚え語らむ。いみじく心もとなきままに、等身の薬師仏を作りて、手洗ひなどして、ひとまに密に入りつつ、京に疾くのぼせ給ひて、物語の多く侍ふなる、あるかぎり見せ給へと、身を捨てて額をつきいのり申すほどに、十三になる年のぼらむとて、九月三日門出して――

このやうな少女達は、いつも君の友達でしたね。さういへば、この雑誌に、君がたうとうプルウストを書きだしたのを読みました。たうとう……思へば十年このかた、君と会へば、プルウストのでないことはなかつたのだから。「失はれし時をもとめて」をどうして書く気になつたのだらう……君がそこから語りはじめてゐるのを、僕は自分の思ひのやうな親しさで読み、やがて自分の思ひの中へ落ちてゐました。

マリイ・シェイケビッチ夫人のプルウストに就いてのクロッキによりますと、病弱の彼も然し却々の勇み肌で、あるとき夫人をさらふやうにしてシロといふ料理店へ連れ込みました。以下、夫人の筆をかりませう。

「ある冬の朝。大戦中のことです。プルウストは立ち現れると言ひはじめました。

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