屋根裏の犯人
本文約6,900字 ・ 読了時間 約14分
あらすじ(AIが作成しました)
大晦日の江戸、医者の妙庵は伊勢屋での煤払いに招かれる。そこで店主の母が、昨年盗まれた銀包みを巡って山伏に騙された話を泣きながら語る。妙庵は山伏の不正を明かし、さらに鼠使いの藤兵衛の協力で、銀包みが屋根裏に隠されていたことを証明する。疑いが晴れ一件落着かと思いきや、母は盗みに関与した家主へ逆に利息の支払いを迫り、金銭を取り戻してようやく満足して正月の準備を迎える。
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晦日風呂
その日は大晦日です。何者か戸を叩く音に、ヤモメ暮しの気易さ、午ちかくまで寝ていた医者の妙庵先生、起きて戸をあけると、
「エエ、伊勢屋源兵衛から参りましたが、本日はお風呂をたてましたので例年の通り御案内にあがりました。どうぞお運び下さいまし」
「では本日は伊勢屋の煤はらいか」
「ヘエ、左様で。例年は十二月の十三日に行う慣いでしたが、当年に限って忙しかったので大晦日に致しました。そろそろ湯のわくころでございます」
「それは御苦労であった。ちょうどいま起きたところだから、茶漬けをかッこんで朝風呂をちょうだい致そう」
使いの者を返して湯をわかし、冷飯を茶漬けにして食事をすませると、伊勢屋へでかけました。
この伊勢屋では、年に一度、煤はらいの日に風呂をたきます。その日になると、まず檀那寺から祝い物の笹竹を月の数だけ十二本もらってくる。これで煤をはらって、用ずみの竹は屋根の押えに使います。タダの物をさがしだしていろ/\と役に立てるのが伊勢屋源兵衛の寝た間も頭を去らぬ心得で、この煤はらいの当日に一年に一度の風呂をたくにも、五月節句のチマキの皮やお盆に飾った蓮の葉なぞと他の使い道のないものを段々とためておいて、これで焚きます。
こういう風呂ですから、家族の者だけが身体を洗って捨てるようなことはしません。妙庵先生は自分から薬代を要求しない人ですから患者の方から見つくろって礼物をさしあげる。そこで伊勢屋では一年に一度の風呂をさしあげます。物の効用は無限であって、それを発見した者はタダで無限の効用を利用することができます。
妙庵先生が伊勢屋へ参りますと、店さきの土間に風呂桶をすえて、源兵衛さんの母親が釜たきをしている。風呂桶は年に一度しか使わないから、ふだんは土蔵にしまっておきます。
「ようこそおいで下さいました。ただいま湯カゲンを見ましょう」
「これは御隠居、いたみ入りますな」