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TORENDIA

神経

本文約13,700字 ・ 読了時間 約28分

あらすじ(AIが作成しました)

正月、社会の悲しい世相やラジオから流れる紋切型の演出に神経を苛立たせていた私は、京都の青楼で出会った少女や、戦後の大阪千日前で再会したかつての馴染み客たちとの交流を通じ、変化する街の姿を追う。極限の状況下でズルチン入りの甘味を求める人々を目の当たりにし、もはや恐怖さえ麻痺したような自身の神経と、不自由な世を生き抜く人々の日常を描き出す随筆的な色彩を持つ作品。

織田作之助

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一

今年の正月、私は一歩も外へ出なかった。訪ねて来る人もない。ラジオを掛けっ放しにしたまま、浮浪者の小説を書きながら三※[#小書き濁点付き片仮名カ、321-上-4]日を過した。土蜘蛛のようにカサカサの皮膚をした浮浪者を書きながら、現実に正月の浮浪者を見るのはたまらなかった。浮浪者だけではない。外へ出れば到る所でいやでも眼にはいる悲しい世相を、せめて三※[#小書き濁点付き片仮名カ、321-上-7]日は見たくなかった。が、ラジオのレヴュ放送を聴いていると、浮浪者や焼跡や闇市場を見るよりも一層日本の哀しい貧弱さが思い知らされた。

近頃レヴュの放送が多い。元来が見るためのレヴュを放送で聴かせるというのがそもそも無理な話で、いかにも芸がなさ過ぎるが、放送局への投書によれば、レヴュ放送を喜んでいるファンもあるという。戦争中禁じられていたものを聴きたいという反動の現れだろうか。

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