おさなき灯台守
本文約1,600字 ・ 読了時間 約4分
あらすじ(AIが作成しました)
北海の荒波に面した岬の灯台で、父と姉弟の親子三人が守りを固める。霧の深いある日、遭難の兆しを感じた父は救助へ向かい、姉は村へ助けを呼びに走り、幼い弟の摩耶は父の帰還と遭難者の安全を祈り、櫓の上で霧笛を吹き続ける。過酷な波と霧が押し寄せる中、幼い少年の健気な奮闘と、父が海上で果たす救助活動の様子を描く物語である。
💰 この本を応援する(投げ銭)
この物語はさほど遠い昔のことでは無い。
北の海に添うたある岬に燈台があった。北海の常として秋口から春先へかけて、海は怒ったように暴狂い、波の静かな日は一日も無かった。とりわけこの岬のあたりは、暗礁の多いのと、潮流の急なのとで、海は湧立ちかえり、狂瀾怒濤がいまにも燈台を覆えすかと思われた。
しかし住馴れた親子三人の燈台守は、何の恐れる景色もなく、安らかに住んでいた。
今日も今日、父なる燈台守は、櫓のうえに立って望遠鏡を手にし、霧笛を鳴しながら海の上を見戍っていた。昼の間は灯をつけることが出来ないからこの岬をまわる船のために、霧笛を鳴して海路の地理を示していたのであった。今日はわけても霧の深い日で、ポー、ポーと鳴す笛の音も、何となく不吉なしらせをするように聞かれるのであった。
「姉さん、今日は何だかぼく、あの笛の音が淋しくて仕方が無いよ、そう思わない?」
「そうね、あたしも先刻からそう思っていたけれど、摩耶ちゃんが淋しがると思って言わなかった。」
「また難破船でもあるのじゃないかしら。」
姉と弟とがこんな話をしているところへ、父はあたふたと階上から降りて来て
「須美、浜へ出て見てお出で、何だか変な物が望遠鏡に映ったから」
「はい」
健気な姉娘の須美は父の声の下に立上ると
「姉さん、僕も行くよ」
と弟の摩耶は後についた。
浜へ出て見ると、果して其処の砂浜の帆柱の折れたような木に、水兵の着る赤いジャケツが絡みついているのが見えた。二人はそれを持って急いで帰った。父はそれを見るや否や、
「ああまたやられたか」と言って「俺はこうしては居られない。直ぐに救いのボートを出すから、須美は村の者に直ぐこのことを知らせるよう、それから摩耶は櫓の上で霧笛を吹いているんだぞ、しっかり吹かないと、お父さんまで難船してしまうぞ。好いか」
「大丈夫お父さん」
摩耶は元気よく答えた。
「それじゃ往って来るぞ」
そう言って父はもうボートを卸して、暗い波の上に乗り出した。
「じゃ摩耶さん、あたしも村の方へ行ってきてよ。霧笛は大丈夫?……しっかり頼んでよ」
「日本男児だ!」
「本当にお父さんはじめ、難船した人達のためなのよ。しっかりやって頂戴」