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TORENDIA

恐ろしい東京

本文約2,600字 ・ 読了時間 約6分

あらすじ(AIが作成しました)

久し振りに上京した筆者が、地下鉄の構造や商店の奇妙な宣伝方法に翻弄され、東京という都市の底知れぬ恐ろしさを実感する様を綴る随筆である。未知の出来事に遭遇するたびに笑い者にされる都会の冷徹な生存競争に馴染めず、人間離れしたインチキな光景に幻滅していく。さらには、ある老名士が軍事探偵の遺族に贈った言葉を周囲が当然のように偽物と決めつけ嘲笑する姿に接し、筆者は人間に対する不信を深め、早々に田舎へと帰る決意を固める。

夢野久作

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🎧 恐ろしい東京 / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

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久し振りに上京するとマゴツク事や、吃驚させられる事ばかりで、だんだん恐ろしくなって来る。田舎にいると、これでも相当の東京通であるが、本場に乗り出すと豈計らんやで、皆から笑い草にされる事が多い。

横浜から出る電車は東京行ばかりと思って乗り込んで、澄まして新聞を読んでいるうちにフト気が付くと大森林の傍を通っているのでビックリした。モウ東京に着く頃だがハテ、何処の公園の中を通っているのか知らんと思って窓の外を覗いてみると単線になっているのでイヨイヨ狼狽した。車掌に聞いてみると八王子へ行くのだという。冗談じゃない。這々の体で神奈川迄送り戻された。

銀座尾張町から上野の展覧会へ行く積りで、生まれて初めての地下鉄へ降りてみる。見渡す限り百貨店みたいで、何処で切符を売っているのかわからないし、プラットフォームらしいものもないので、間違ったのかなと思って又石段を上って見ると、丸キリ知らない繁華な町である。そんなに遠くへ歩いたおぼえはないが……と不思議に思い思いモトの階段を降りて、反対側の階段を昇ると、又も素晴らしく巨大な、知らない時計店の前に出た。上野の広小路じゃないか知らんと思い迷ってキョロキョロしていたが、そうでもないようである。……とにかく今一度モトの処へ帰らなければと思い思い、タッタ今見て来た店の順序をタヨリに最初に降りた階段を上ってみるとヤットわかった。三つの町は三つとも銀座尾張町なので、入口が四ツ在るのを知らずに、同じ四辻を別々の方向から眺めたから町の感じが違ったのだ。同時に、ホントの地下鉄はモウ一階下に在る事も、音響の工合でわかったので……ナアンダイ……と思ったが、しかし何となく心細くなったので、そのまま宿へ帰ってしまった。

山の手線電車が田町に停まったら、降りた人が入口を開け放しにして行って寒くてしようがないので、入口を閉めようとしたがナカナカ閉まらない。直ぐ傍に立っている喜多実君と坂元雪鳥君とであったかが腹を抱えて笑っている。理由がわからずマゴマゴしているうちに、自動開閉器で閉まって来た扉に突き飛ばされかけた。

この恨みは終生忘れまいと心に誓った。

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