TRENDIA CLASSIC
氷湖の公魚
佐藤垢石
1 / 2
トルコ人ほど水をよく飲む国民はない。水玉を一献舌端に乗せて、ころがすと、その水はどこの井戸、どこの湖水から汲んだものかをいい当てるほど、水に趣味をもっている。
わが国にも大そう水に趣味をもった人がいた。近江国琵琶湖畔堅田の北村祐庵という医者は、日ごろ茶をたてる時、下僕に命じて湖上から水を汲ませたが、その水の味によって汲み場を指摘したという。文化ごろ煎茶の流行した時代には数奇者が集まって幾つもの椀に煎茶を盛って出し、その水の出所が多摩川か、隅田川か、はた井戸かをいい当てるを誇ったということである。支那にも李徳祐陸羽、蒲元などいう清水飲み分けの名人がいた。
水の味を飲み分けるのは、余程舌の肥えた人でないとむずかしいが、魚の味ならば誰にも大概は分かる。鯛や鯖の産地。鰻や鯉、鮎などの天然の産か養殖ものか、網でとったものか釣ったのか、などということは少し食味に通じた人ならば舌先で分ける。
そこで想い出すのは公魚である。公魚は氷魚と同じにこれから冬に入って季節となるが、東京市民の口に入るものは、多く土浦の霞ヶ浦産である。白銀色に美しいところはあるけれど、泥臭い上に渋味が強く至味というわけにはいかない。俗にチカキという青森県や北海道方面からの乾公魚は一層渋味が強くて惣菜にもならぬほどである。ただ、形の大きいところが取柄であろう。
佐藤垢石の他の作品
TRENDIA CLASSIC
葵原夫人の鯛釣
佐藤垢石
葵原夫人の鯛釣
佐藤垢石
TRENDIA CLASSIC
青鱚脚立釣
佐藤垢石
青鱚脚立釣
佐藤垢石
TRENDIA CLASSIC
泡盛物語
佐藤垢石
泡盛物語
佐藤垢石
TRENDIA CLASSIC
秋の鮎
佐藤垢石
秋の鮎
佐藤垢石
TRENDIA CLASSIC
石を食う
佐藤垢石
石を食う
佐藤垢石
TRENDIA CLASSIC
石亀のこと
佐藤垢石
石亀のこと
佐藤垢石
TRENDIA CLASSIC
アンコウの味
佐藤垢石
アンコウの味
佐藤垢石
TRENDIA CLASSIC
烏恵寿毛
佐藤垢石
烏恵寿毛
佐藤垢石
TRENDIA CLASSIC
海豚と河豚
佐藤垢石
海豚と河豚
佐藤垢石
TRENDIA CLASSIC
うむどん
佐藤垢石
うむどん
佐藤垢石
TRENDIA CLASSIC
岩魚
佐藤垢石
岩魚
佐藤垢石
TRENDIA CLASSIC
想い出
佐藤垢石
想い出
佐藤垢石