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TORENDIA

水と骨

本文約5,500字 ・ 読了時間 約11分

あらすじ(AIが作成しました)

各地の川を釣り歩いた経験から、河川の水温と環境や地質の関係を論じる随筆。日本海側と太平洋側に注ぐ川の温度差が、雪解けの早さや流域の耕地面積に影響されることを考察する。さらに、水温が魚の身の締まりや骨の柔らかさに直結することを説き、利根川などの具体例を挙げながら、冷たい水で育つ魚がいかに美味であるかを綴る。川の性質を知ることは釣りの醍醐味であり、水温と食味の密接な関係を自身の知見に基づき紹介する。

佐藤垢石

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🎧 水と骨 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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一

人は常識的には、太平洋へ注ぐ表日本の川の水温よりも、日本海へ注ぐ裏日本の川の水温方が低いであろうと、考えるにちがいない。

ところが、実際は日本海へ注ぐ川の方が平均高い水温を持っているらしい。このことは理学的にも統計的にも、何か責任の上に立って調べたわけではないから必ずそうであるとは断定できないが、私が多年、各地の川を釣り歩いてみて、裏日本の川の方が早く水が温み、そして盛夏の候には表日本の川より水温が高くなることを経験したのである。

水温と釣りには、切っても切れない縁のあるのは誰でも経験している。疑うというわけではないが、川の性質を知ってその川特性の水温を頭に入れながら釣りすることは、また楽しみのあるものである。

たとえば、手近の例が上越国境即ち白根火山の北方、信濃の渋峠を地点として東方へ走り岩代、上野、下野の三国境付近の尾瀬沼の東でつきる山脈の裏表は完全に、日本海へ注ぐ川と太平洋へ注ぐ川との分水嶺をなしている。この山脈の中央に他を圧して聳立する大刀根岳の雪渓の滴りを源とする利根川と、やはりこの山脈中の名山、谷川岳の北裏を源とする越後の魚野川の水温を比較すると、川が暖かい陽当たりに向いて流れるにも拘わらず、利根川の方が水温が低い。

また、越後の阿賀の川の支流只見川は会津の奥、即ちこの山脈の東端に位する燧ヶ岳の西南の谷から北方へ向いて流れ出すが、尾瀬沼の森林中に源を持って南方を指して流れいく利根の支流片品川の方が水温が低いのである。

遠く加賀の白山の裏川から源を発する射水川、越中立山の西北から出る神通川も共に、日本海へ注ぐのではあるが、上の保、吉田、板取、揖斐の各支流を集め、木曾の奥から出てくる木曾川に合する長良川の方が、太平洋に向いているにも拘わらず水温が低い。

まれに、平州に源を発する駿州の富士川、野州塩原の裏山から出る常陸の那珂川のように太平洋へ注いではいるが大そう水温が高く、北アルプスの西側、黒部五郎岳の峡谷から出る越中の黒部川は、日本海へ注いでいるが、水温が低いという川もあるが、これは私がこれから説く、川の性質の異例としておこうか。

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