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TORENDIA

巣離れの鮒

本文約1,000字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

春の訪れとともに冬の蟄居から目覚め、活動を始める鮒の生態を解説する。集団を解いて餌を積極的に求める「巣離れの鮒」を釣るための、ヅキ式探り釣りの竿や仕掛け、餌の使い分けといった具体的な技術を詳述する。また、関東随一の釣り場として知られる茨城県の水郷地方における各河川や沼の地理的状況を紹介し、十年秋の出水を経て良型の鮒が多く流入した現地の様子を記す、釣り愛好家に向けた実用的な案内である。

佐藤垢石

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🎧 巣離れの鮒 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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寒い冷たいとはいうが、もう春だ。そろそろと水が温んでくる。川や沼の面に生色ある光がただよって、いつの間にか堤防の陽だまりに霜ぶくれの土を破って芝芽が小さな丸い頭を突き出すと魚も永い冬の蟄居から眼ざめるのである。鮒は晩秋水の深みに落ち込んで腐れ藻の下や泥底に集団をなして寒い一冬を越すのであるが、寒が明けて陽ざしが明るくなってくると、集団を解いて静かに動きはじめる。これを巣離れの鮒というのである。

鮒は厳冬の頃でも寒鮒釣りの鈎にかかるが、それは餌に絡まる振舞が甚だ不活発であるから、集団にめぐり会わなければ大釣りはないものである。ところが温み始めた水に誘われて泳ぎ出した鮒は積極的に餌を求めるようになる。寒鮒時代よりも沢山釣れるわけである。

巣離れの鮒を釣るには数本の竿を並べてもいいが、能率的であるのはヅキ式の探り釣りである。巣から離れた鮒は枯れた真菰の根などを緩やかに移動しているから釣る人も鮒の遊ぶ場所を探りながら移動して行くのが面白い。竿は二間半から三間くらい、胴のしっかりしたものがいい。道糸は秋田の三十本撚りくらいにして錘から上を三、四尺三厘柄のテグス、鈎は中輪の三分くらいで二本鈎にする。鈎素は下鈎は六寸、上鈎が四寸程度である、仕掛けの全長は竿よりも三、四尺短くするのが探りいいのである。道糸に一分玉から二分玉くらいの玉浮木を五、六寸間隔に七、八個つける、下から次第に上の方へ玉を大きくしていく人もあるし、それと反対にする人もある。それは好き好きである。なるべく形の大きい蚯蚓を餌にして枯れた真菰のまわりや腐った藻の切れ目などへ道糸を垂直につるし込み、入れると間もなく数多い玉浮木がずるずると引っ張り込まれていく興趣は実に何ともいわれない。ここには沢山いるというところを発見したら、そこで携えていった数本の竿を出して並べ釣りをやるのもいいだろう。探り釣りには時々ほんとうの尺鮒が出るから油断はならない。

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