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TORENDIA

孤独のことなど

本文約1,500字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

冷たい心を持つと評される著者が、自身の孤独の正体と創作への決意を綴る随筆。幼少期の経験により他者と感情を分かち合うことが困難な著者は、川端康成の文学や手紙に触れる中で、現実の冷たさと美しいものへの憧れの間で葛藤する。他者との隔絶という運命的な孤独を受け入れ、現実の中に厳しく美しいものを見出す道を創作の世界に見出し、確かな覚悟を抱いていくまでの内省的な過程を描く。

北條民雄

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🎧 孤独のことなど / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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――美しいものは一番危つかしい。一番こはれやすい。その上一番終末的でさへあります。だから美しいゆゑに切ないものは、一番毅然とせねばならない。一歩どちらかへぐらつけばそれは忽ち甘くなるか、又は感傷になる――これは保田與重郎氏が川端康成氏の芸術を評した時の言葉であるが、私はこの一文を読んだ時、ああと溜息をつき、このやうに美しいものがこの世の世界にあるのかと、頭をあげ瞳を輝かせたのであつた。けれど、それは私の世界から遠く、夢を隔てた彼方であつた。

昨夜も友人の一人は私を評して冷たいと云ひ、もう一人は、皮肉に君の眼は冷たく光つてゐると云つた。この二人の友の言葉を、私はどうして否定出来よう。事実私はどんな親しい友と語る時でも、不幸に打ちくだかれた可憐な少女を見る時でも、決して相手と感じを共にし、嬉しさや悲しみを共に味ふなどいふことはまるで出来ず、ひたすら己の理智の鏡を曇らせまいと努力し、私かに観察の矛を鋭く砥ぐ以外に何も知らぬ、これは、幼い頃に母を失ひ、愛情の優しいあたたかみを知らぬ私の、性情の奥深く潜んでゐる冷たい心の故であらうけれど、一面又私の触れる世界の雑駁さが映るためであると云つたとて、私は決して自分をやましいと思ひはせぬ。私の冷たさは現実の冷たさであると云へば、詭弁を弄すると人は云はう。けれど私の心の中を去来する激しい孤独を理解されたなら、私の心の奥底にも、愛情の柔かみを憧れ、美しいものを求めてやまぬ苦悩にも頷いてくれよう。

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