癩院記録
本文約10,400字 ・ 読了時間 約21分
あらすじ(AIが作成しました)
ハンセン病患者が隔離された療養所での生活を記録する。収容病室を経て舎へ移る過程、不自由舎と健康舎に分かれた内部構造や、患者らが共同生活を送りながら独自の職業を持ち、仕事に従事する様子を描く。経験に基づく治療法や医師への信頼、外部からの訪問者に対する患者の鋭敏な感覚に触れつつ、急性結節や神経痛による激しい苦痛と、それらと向き合いながら生きる重病室での過酷な状況を浮き彫りにする。
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入院すると、子供を除いて他は誰でも一週間乃至二週間ぐらゐを収容病室で暮さなければならない。そこで病歴が調べられたり、余病の有無などを検査されたりした後、初めて普通の病舎に移り住むのであるが、この収容病室の日々が、入院後最も暗鬱な退屈な時であらう。舎へ移つてしまふと、いよいよこれから病院生活が始まるのだといふ意識に、或る落着きと覚悟とが自ずと出来、心の置きどころも自然と定つて来るのであるが、病室にゐる間は、まだ慣れない病院の異様な光景に心は落着きを失ひ、これからどのやうな生活が待つてゐるのかといふ不安が、重苦しくのしかかつて来る。それに仕事とても無く、気のまぎらしやうもないまま寝台の上に横はつてゐなければならないので、陰気な不安のままに退屈してしまふのである。
舎へ移る前日になると附添夫がやつて来て、舎へ移つてからのことを大体教へてくれ「売店で四五十銭何か買つて行くやうに。」と注意される。その四五十銭がまあいはば入舎披露の費用となるのであつて、たいていが菓子を買つて行つてお茶の飲むのである。
その日になると附添夫が三人くらゐで手伝つてくれ、或る者は蒲団をかつぎ、或る者は茶碗や湯呑やその他の日用品を入れた目笊をかかえてぞろぞろ歩いて行くのである。さうしていよいよ癩院生活が始まるのである。
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