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TORENDIA

秋空晴れて

本文約9,200字 ・ 読了時間 約19分

あらすじ(AIが作成しました)

病気の母を抱え就職を希望する少年一男は、建設現場の高所で働く父平吉の頼みで監督と面会する。職工頭山田に雇いを断られ落胆する一男だが、その後現場で発生した事故の際、誰にも真似できない卓越した胆力と身体能力を発揮し、自分を拒絶した山田を命がけで救出する。その勇敢な姿は現場の全員を感服させ、一男のひたむきな家族への想いと高い精神性が秋の澄んだ空の下で鮮やかに際立つ様子を描く。

吉田甲子太郎

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一

「まったくでござんす、親方。御覧の通りの痩せっぽちじゃござんすが、これで案外胆っ玉はしっかりしてますんで。今まで乗ってました船でも、こいつぐらい上手にマストへのぼる奴はなかったそうでござんす。まるで猿みたいな奴だなんていわれてたくらいで――高いところの仕事にはもって来いの餓鬼です。どうでしょう、ひとつあっしと一しょにリベット(鋲打)の方へでも、ためしにお使いんなっては頂けねえでしょうか」

ガラガラ、ガラガラとウィンチ(捲揚機)の廻転する音、ガンガンと鉄骨を叩く轟音、タタタタタとリベット(鋲)を打ち込む響、それに負けないように、石山平吉は我にもなく怒鳴るような大声で一息に言い終ると、心配そうな眼をして監督の顔を覗き込んだ。なかなか仕事はないし、出来ることなら自分の手もとで働かせたい――そう思うと平吉は、どうしても一生懸命にならずにいられなかった。

監督は腕組をしたままの姿で、平吉と並んで少し笑を含んで自分の方を見て立っている少年へ眼を移した。息子の一男が笑を含んでいたのは、父親のいうことを聞いていると、つまりはこの自分を父親が自慢していることになるのがおかしかったからである。

なるほど、一男は十七という年齢にあわせては、小柄なばかりでなく痩せている方だった。しかし、潮風にやけたその面魂には、どこかしっかりしたところがあった。少し茶色がかった静かな瞳、きちんと結んだ唇、どっちかというと柔和な顔立だったが、眉のあたりに負けぬ気が見えて、顔全体を引き締めていた。それに何よりも監督を驚かしたのは、こんな場所に立っていながら、その少年の腰つきが少しもふらついていないことだった。眼にも怖がっているらしいおどおどした色はまるで現れていない。

今三人の男が立話をしている場所は、地上から二十五メートルも離れた空間だ。足場がわりに鉄骨の梁の上に懸け渡しただけの何枚かの板の上に立っているのだった。下を覗けば、地下室をつくるために掘りさげられた地底まで三十メートルはあるだろう。よほど馴れたものでも、何かにつかまらなければ眼がくらくらして覗いてはいられない高さだ。

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