美しき元旦
本文約6,400字 ・ 読了時間 約13分
あらすじ(AIが作成しました)
新年拝賀式の全校男子代表に選ばれた高木光吉は、貧しさゆえのぼろぼろの衣服を恥じ、辞退を考える。しかし母の励ましにより、心さえ正しければ良いと決意を固める。式までの日々、光吉は母と協力して懸命に働き、当日は母の愛情が込められた新しい洋服を身にまとって壇上に立つ。冬晴れのなか、誇り高く代表の役目を果たそうとする少年の成長と、その背後で静かに見守り続ける母の深い慈愛を描く。
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一
「そういうわけで、来年のお正月の拝賀式は、この再建日本のかくごをかためるためにも、別しておごそかにとりおこなわなければなりません。」
先生のわかわかしい顔が赤くもえたってきたのは、教室のすみでまっ赤にやけているストーブのせいばかりではなかった。
六十二人の少年のしんけんな目が、先生の熱情にいっせいにこたえて、教壇の上の顔を見つめている。
うす日のさす窓の外を、十二月のからっ風がヒューッとふいていっても、それに気をとられる者もなかった。教室の中はしんとして、みんな先生のつぎのことばを待ちかまえている。
「さて、本校では例年のとおり、六年級の男女から、それぞれ一名の代表者をえらんで、全校の男子、女子にかわって、式場で新年のあいさつをのべさせることにきまりました。この級からは、みなさんに男子の代表をえらびだしてもらわなければなりません。これはみなさんが在学中ただいちどしか出会うことのできない重い役めです。みなさんの希望、みなさんのかくごを、この新時代の新年拝賀式にりっぱにいいあらわしてもらうには、どの友人を立たせたらよいか。まじめに投票してほしいと思う。今、投票用紙をくばるから、あの人ならと思う名まえを一つだけ書いてください。」
六十二人の少年たちの胸が、どれもこれも、急にドキドキしてきた。
「五分間考えて、それから書く。なお、いちばん投票数の多い人が代表者、そのつぎの人が代表候補者――つまり代表に急にさしつかえがおこったとき、その人にかわってあいさつをする、いわば補欠選挙になるのだからそのつもりで――では、高木と中条、この紙をみんなにくばって。」
先生はうで時計を見ながら、級長の高木光吉と副級長の中条奈良夫とに、小さく切った投票用紙をくばらせた。
二十分とたたないうちに、選挙はすらすらと終わった。そして、高木が代表、中条が代表候補者ということにきまった。