TRENDIA CLASSIC

浅草燈籠

正岡容

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大正文化の一断片たる浅草オペラの楽屋並びにその俳優たちの生活を最も具さに美しく描破してゐるものは、谷崎潤一郎氏の「鮫人」だらう。何ゆゑに作者はあの秀作の筆を半途にして擲つてしまつたか、大正浅草風俗文化史の上からも一大痛恨事と云はざるを得ない。宇野千代、十一谷義三郎、浜本浩と同じ世界を材とした小説はそのゝちも寡くないが、「鮫人」のたゆたな力量感を上越す作品はまだ出現を見ないやうである。

「評判の、日本館の歌劇をみに入る。――舞踊劇「暗黒」といふものをみる。髪を長くしたり、異様な帽子をかぶつたりした芸術家の群をこゝかしこに見いだす。さかんに声のかゝることもうはさのとほり、われ/\の知らないうちに、われ/\の知らない時代の来たことを考へる」

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