TRENDIA CLASSIC

新生の門

林芙美子

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わたしは刑務所を見にゆくと云うことは初めてのことです。早い朝の汽車のなかで、わたしは呆んやり色々のことを考えていました。

この刑務所をみにゆくと云うことは、本当は一ヶ月前からたのまれていたのですけれど、何だか自分の気持ちのなかに躊躇するものがあって、のびのびに今日まで待ってもらっていたのです。

朝の汽車はたいへん爽かに走っています。野も山も鮮やかな緑に萌えたって、つつじの花の色も旅を誘うように紅い色をしていました。わたしは、その一瞬の飛んでゆく景色にみとれながら、女囚のひとたちをみにゆく自分の気持ちを何だか残酷なものにおもいはじめているのです。わたし自身、人間的な弱点をたくさん持っていますせいか、ほんとうはこうした刑務所見学なんか困った気持ちになるのです、こうしたほのぼのとした景色から長い間別離されてしまって、ある運命の摂理のなかにいる女囚のひとたちのことを、わたしはどんな風にみればよいのかと、そんなことばかり不安に考えていました。

栃木の町には朝十一時頃着きました。

駅へは教誨師の方だと云う若い女のひとがわたしたちを迎えに来ていて下さったのですが、この方から貰った名刺には、栃木刑務所勤務、教誨師、大西ヤスエと書いてありました。こんな若いひとが教誨なさるのかと、わたしはちょっと明るい気持ちで、お迎えの自動車に乗ったのですけれど、自動車にゆられながらも、わたしは何か自分自身にも頼りないものを感じているのです。

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