新生の門
本文約7,700字 ・ 読了時間 約16分
あらすじ(AIが作成しました)
栃木刑務所を訪れた著者が、女囚たちの生活を目の当たりにし、その心情と罪の重さに思いを馳せる様子を描く。面会した若き教誨師や、幼子を背負って働く女囚の瞳、統計から読み解く女性の犯罪動機を通じ、刑務所という特殊な環境とそこに生きる女性たちの姿を綴る。罪を償い社会へ戻る彼女たちに対し、社会がどのような眼差しを持つべきか、また刑務所の存在意義を深く考察する記録である。
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わたしは刑務所を見にゆくと云うことは初めてのことです。早い朝の汽車のなかで、わたしは呆んやり色々のことを考えていました。
この刑務所をみにゆくと云うことは、本当は一ヶ月前からたのまれていたのですけれど、何だか自分の気持ちのなかに躊躇するものがあって、のびのびに今日まで待ってもらっていたのです。
朝の汽車はたいへん爽かに走っています。野も山も鮮やかな緑に萌えたって、つつじの花の色も旅を誘うように紅い色をしていました。わたしは、その一瞬の飛んでゆく景色にみとれながら、女囚のひとたちをみにゆく自分の気持ちを何だか残酷なものにおもいはじめているのです。わたし自身、人間的な弱点をたくさん持っていますせいか、ほんとうはこうした刑務所見学なんか困った気持ちになるのです、こうしたほのぼのとした景色から長い間別離されてしまって、ある運命の摂理のなかにいる女囚のひとたちのことを、わたしはどんな風にみればよいのかと、そんなことばかり不安に考えていました。
栃木の町には朝十一時頃着きました。
駅へは教誨師の方だと云う若い女のひとがわたしたちを迎えに来ていて下さったのですが、この方から貰った名刺には、栃木刑務所勤務、教誨師、大西ヤスエと書いてありました。こんな若いひとが教誨なさるのかと、わたしはちょっと明るい気持ちで、お迎えの自動車に乗ったのですけれど、自動車にゆられながらも、わたしは何か自分自身にも頼りないものを感じているのです。