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TORENDIA

白いシヤツの群

本文約3,400字 ・ 読了時間 約7分

あらすじ(AIが作成しました)

清は仲間から金の分け前を執拗に迫られるが、自身の関与を否定し続ける。ある日、清は仲間の安松から仲間が逮捕されたことを聞かされ、追跡の危機を悟って逃走を図る。刑事の視線を回避しようと必死になる清は、逃げ込んだ公園で白いシャツを着た人影のような集団や、首のない胴体、さらに過去の追手と遭遇し、錯乱の中で電柱へと追い詰められていく。本書は、追いつめられた男の心理と逃避行の様相を描く。

田中貢太郎

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🎧 白いシヤツの群 / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

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清は仲間の安三から金の分け前を要求せられてゐた。彼はそれを傍の者に知られないやうにと、自分の眼の前へひよつとこ顔を突出してゐる相手の言葉を押へつけた。

「まア、飲め、飲め、酒を飲まない奴は、話せないよ」

清はビールのビンを手にして安三のカツプに注いだ。

「酒も飲むがな。酒も飲むが、あれも貰ふがな、」

安三は小さな眼をちか/\動かした。

「君は夢でも見たのか、をかしな奴だな、つまらんことをいはずに、飲め、」

「つまらんことをいはんがな、あれを貰ふというてまうがな、」

「馬鹿だなあ、電車のパスしかなかつたといつてるぢやないか、欲しけれやくれてやらう、」

「ヘツ、ヘツ、ヘツ、ヘツ、」

安三は相手を馬鹿にしたやうな笑ひ方をして見せた。

「馬鹿、」

「馬鹿でも阿呆でも宜しいがな、あれを貰へば、」

「パスならやるよ、」

「ヘツ、ヘツ、ヘツ、ヘツ、」

「しやうのない奴だな、ぢや何をくれといふんだ、」

「野猪貰ひまほか、」

「まだあんなことをいつてる、野猪も鹿もあるもんかね、パスだよ、パスといつてるぢやないか、煩さいな、」

「煩さいというたかて、あたい黙りまへんぜ、あんたが野猪くれるまで、」

清の頭に昨夜の光景が映つた。それは電車からおりた女をつけて行つて、露次の内で押へつけたことであつた。

(声を出したら殺してしまふぞ、これを持つてるぞ)

懐ろにしてゐた短刀を鞘ぐるみ出して、それを女の右の手先に触はらした。女は脊のすつきりした体を壁に寄せかけて、切れの長い大きな眼を暗い中におど/\さしてゐた。と、一緒にゐた安三が、女のかけてゐた灰色に見えるシヨールを引奪つて、その端を女の口に持つて行つた。

(声を立てたら命がないがな、おまはん好い子やから、黙つとりなはれ、)

女は少しも抵抗しなかつた。

(よし、静かにしてゐるなら俺達も乱暴はしやしない、)[#「)」は底本では「」」]

春先のやうな暖かな晩であつた。その露次はすぐ先が行き詰りのやうになつてゐて右に折れ曲り見附には長屋の横手の壁らしい物があつた。

下駄の音が聞えて、何人かゞ此方の方へ曲つて来ようとした。

(来た、)

安三がいつた時には、もう女から離れて逃げようとしてゐた。

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