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TORENDIA

房州紀行

本文約3,900字 ・ 読了時間 約8分

あらすじ(AIが作成しました)

かつて房州で心安き生活を送った大町桂月は、離れ離れになった学友の羽衣、烏山と共に再び房州を訪れる。霊岸島から汽船で金谷へ渡る一行は、悪天候や船酔いに見舞われながらも、鋸山や鬼涙山、鹿野山を巡る。紅葉が映える山々や眼下に広がる絶景を眺め、自然の風景を連歌に詠み込みながらの旅路となる。九十九谷の奇観を目にし、古跡を辿りつつ交流を深めた一行は、再会と旅の充足を胸に、夕暮れ迫る東京湾を渡り都へと帰還する。

大町桂月

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🎧 房州紀行 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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江山の姿、とこしなへに變ることなくして、人生の遭逢、竟に期すべからず。曾て房州に放浪して、菱花灣畔に、さゝやかなる家を借り、あびきする濱邊に出でて、溌剌たる鮮魚買ひ來りては、自から割き、自から煮て、いと心安き生活を送り、時には伴れだちて、城山の古城址に興亡の跡を訪ひ、延命寺の古墳に里見氏の昔を弔ひ、富山を攀ぢ、清澄山に上り、誕生寺を訪ひ、洲崎辨天にまうで、行き暮れて白須賀灣頭の月に臥し、夜ふけて鋸山上の古寺に白雲と伴ひて眠るなど、形體を波光山影の間に忘れて、虚心江上の白鴎に伴ひし當年の遊蹤、猶ほ昨日の如きに、同じく遊びしもの、今四散す。一盃を共にせむとして、また得べからず。品川海上より天邊一髮の青螺を望む毎に、覺えず愴然として涙下る。

この三年の間、同じ窓に學びし友の、一半は地方に別れ行き、都に殘れるものも、相逢うて胸襟を開くこと稀なれば、暇ある時を擇びて、二日三日、共に江湖の外に優遊して、積もれる思ひを吐きつくさばやとて、羽衣、烏山二子と共に、かれこれ其の遊ぶ處を議したる末、遂にわれ東道の主人となりて、房州にゆくことに決す。

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