TRENDIA CLASSIC
房州紀行
大町桂月
1 / 6
江山の姿、とこしなへに變ることなくして、人生の遭逢、竟に期すべからず。曾て房州に放浪して、菱花灣畔に、さゝやかなる家を借り、あびきする濱邊に出でて、溌剌たる鮮魚買ひ來りては、自から割き、自から煮て、いと心安き生活を送り、時には伴れだちて、城山の古城址に興亡の跡を訪ひ、延命寺の古墳に里見氏の昔を弔ひ、富山を攀ぢ、清澄山に上り、誕生寺を訪ひ、洲崎辨天にまうで、行き暮れて白須賀灣頭の月に臥し、夜ふけて鋸山上の古寺に白雲と伴ひて眠るなど、形體を波光山影の間に忘れて、虚心江上の白鴎に伴ひし當年の遊蹤、猶ほ昨日の如きに、同じく遊びしもの、今四散す。一盃を共にせむとして、また得べからず。品川海上より天邊一髮の青螺を望む毎に、覺えず愴然として涙下る。
この三年の間、同じ窓に學びし友の、一半は地方に別れ行き、都に殘れるものも、相逢うて胸襟を開くこと稀なれば、暇ある時を擇びて、二日三日、共に江湖の外に優遊して、積もれる思ひを吐きつくさばやとて、羽衣、烏山二子と共に、かれこれ其の遊ぶ處を議したる末、遂にわれ東道の主人となりて、房州にゆくことに決す。
大町桂月の他の作品
TRENDIA CLASSIC
一万尺の山嶽
大町桂月
一万尺の山嶽
大町桂月 ・ 約2分
TRENDIA CLASSIC
赤城山
大町桂月
赤城山
大町桂月
TRENDIA CLASSIC
秋の筑波山
大町桂月
秋の筑波山
大町桂月
TRENDIA CLASSIC
足柄の山水
大町桂月
足柄の山水
大町桂月
TRENDIA CLASSIC
飛鳥山遠足
大町桂月
飛鳥山遠足
大町桂月
TRENDIA CLASSIC
吾嬬の森
大町桂月
吾嬬の森
大町桂月
TRENDIA CLASSIC
石田堤
大町桂月
石田堤
大町桂月
TRENDIA CLASSIC
沖の小島
大町桂月
沖の小島
大町桂月
TRENDIA CLASSIC
碓氷峠
大町桂月
碓氷峠
大町桂月
TRENDIA CLASSIC
梅の吉野村
大町桂月
梅の吉野村
大町桂月
TRENDIA CLASSIC
阿武隈川水源の
仙境
大町桂月
阿武隈川水源の仙境
大町桂月
TRENDIA CLASSIC
親子遠足の感
大町桂月
親子遠足の感
大町桂月