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TORENDIA

石田堤

本文約4,300字 ・ 読了時間 約9分

あらすじ(AIが作成しました)

石田三成が小田原征伐の一環として武州忍城を水攻めした際、築かれた長大な堤跡を訪ねた紀行文である。歴史的経緯を踏まえつつ、丸墓山や忍城跡の今を歩き、当時の状況を追想する。また、三成の人物像について、政治家としての才智や理智的側面を考察し、関ヶ原の戦いにおける動機や意義についても独自の視点から論じる。さらに、上杉謙信の逸話を交えつつ、武士の精神性や自身の感想を綴る。

大町桂月

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🎧 石田堤 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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『石田三成』一部、朝吹英二氏よりおくりこさる。名は知り居れど、面識は無き人也。氏の著書かと思ひしに、さにあらで、氏はいたく石田三成に同情を表し、其事跡を世に明かにせむとて、渡邊世祐氏にたのみてこの書をつくらしめ、非賣品として、梓に上したる也。渡邊氏も、まだ不完全なりとて、自から謙遜して、稿本と題したるが、ひろく材料を集め、一々出所をしるし、態度眞面目にして、言ふ所、穩健也。三上博士も力を添へしとの事にて、其序文も要を得たり。われ八九年前、一文をつくりて、三成の人物を偉とし、其の關ヶ原の擧を壯としたる事もありたるが、今この書に接して、大いにうれしく思はるゝ也。

われ思ふに、好漢、好漢を知るといふ言あるが、秀吉と三成とは、その好漢と好漢也。所謂肝膽相照したるもの也。まして三成は所謂兒飼ひの身也。加藤清正も同じく兒飼ひの身なるが、これは武也、三成は文也。即ち清正は軍人にして、三成は政治家也。政治家は正直一方では通らず、非常に才智のいることにて、策略をも要することなれば、人に誤解せられ易し。清正の如き正直なる人には、猶更也。三成が奸智の方の人か、良智の方の人かは、當時にありても、必ずや一大疑問也。清正は、奸智の方に解せしなるべし。秀吉は肝膽相照して疑はざりし也。士は己れを知るものの爲に死すと云へり。如何なる奸智の人とても、兒飼ひの身の上に、肝膽相照されては、奸智も終に良智となるべし。清正は涙の人也。三成は理智の人也、殊に自信が強すぎければ、或一派の人には嫌はれしなるべけれど、それがまた一方には、奸智ならざる反證ともなる也。良智とまでは行かずとも、奸智の側の人にはあらずと信ずる也。

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