TRENDIA CLASSIC
親馬鹿の旅
大町桂月
1 / 2
金さへ返せば、鬼も佛。重荷の一部がおりたかと思へば、我心も輕くなり、金なほ餘れるに、家に歸るより早く、さあ來い、何處へでも、伴れて行つてやらうと、次男と三男とをつれて、立ち出でたり。長男は、近く箱根へつれて行きしことあり、學校の都合もあり、殊に、この日、家にあらざりければ、つれざる也。
さて、都を離れて、何處へゆけば子供は面白がるかと、いろ/\考へしが、江の島は、山もあり、海もあり、貝細工あり、鮑取りもあれば、子供をつれての旅は、これに越したる處はあらざるべしとて、江の島へと思ひ定めて、新橋より汽車に乘る。
まだ次男が八歳、三男が六歳の時の頃也。風寒ければ、汽車の窓は開かず。玻璃越しに、山を眺め、海を眺め、田を眺め、茅屋を眺め、煙突を眺め、荷車を眺め、行人を眺めて、喜びあひしが、冬の日脚低く、夜に入りて、江の島に到りて宿る。晩食の膳に大いなる鰕上りけるに、兒等いたく喜べり。
あくる日、起き出づれば、太陽將に海洋の彼方に上らむとす。日の出を見よと、二兒を呼び起す。二兒、眼をこすり/\日の出を眺めけるが、さまで喜べる樣も無し。二兒をつれて、濱邊を散歩しけるに、一艘の漁舟、沖より歸りしばかりにて、漁せし鰕、少しばかり舟に有り。それを買ふ。これで少しは喜べるさま也。
大町桂月の他の作品
TRENDIA CLASSIC
一万尺の山嶽
大町桂月
一万尺の山嶽
大町桂月 ・ 約2分
TRENDIA CLASSIC
赤城山
大町桂月
赤城山
大町桂月
TRENDIA CLASSIC
秋の筑波山
大町桂月
秋の筑波山
大町桂月
TRENDIA CLASSIC
足柄の山水
大町桂月
足柄の山水
大町桂月
TRENDIA CLASSIC
飛鳥山遠足
大町桂月
飛鳥山遠足
大町桂月
TRENDIA CLASSIC
吾嬬の森
大町桂月
吾嬬の森
大町桂月
TRENDIA CLASSIC
石田堤
大町桂月
石田堤
大町桂月
TRENDIA CLASSIC
沖の小島
大町桂月
沖の小島
大町桂月
TRENDIA CLASSIC
碓氷峠
大町桂月
碓氷峠
大町桂月
TRENDIA CLASSIC
梅の吉野村
大町桂月
梅の吉野村
大町桂月
TRENDIA CLASSIC
阿武隈川水源の
仙境
大町桂月
阿武隈川水源の仙境
大町桂月
TRENDIA CLASSIC
親子遠足の感
大町桂月
親子遠足の感
大町桂月