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TORENDIA

霊廟

本文約6,400字 ・ 読了時間 約13分

あらすじ(AIが作成しました)

芝の霊廟を再訪した著者は、その壮麗な建築の構造配置から、フランスの詩人レニエエがヴェルサイユに抱いたような美的感奮と懐古の情を深く経験する。過渡期の都市で滅びゆく過去の遺産に対し、著者はそれが民族の精神を伝える不朽の芸術であることを確信し、祖先が残した偉大なる過去の霊場から、現代の不真面目な美術を排してその美を重んじるべきだと論じる。

永井荷風

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🎧 霊廟 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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仏蘭西現代の詩壇に最も幽暗典雅の風格を示す彼の「夢と影との詩人」アンリイ・ド・レニエエは、近世的都市の喧騒から逃れて路易大王が覇業の跡なるヴェルサイユの旧苑にさまよい、『噴水の都』La Cit des Eaux と題する一巻の詩集を著した。その序詩の末段に、

Qu'importe! ce n'est pas ta splendeur et ta gloire

Que visitent mes pas et que veulent mes yeux ;

Et je ne monte pas les marches de l'histoire.

Au devant du Hros qui survit en tes Dieux.

Il suffit que tes eaux gales et sans fte

Reposent dans leur ordre et tranquillit,

Sans que demeure rien en leur noble dfaite

De ce qui fut jadis un spectacle enchant.

わが歩みヴェルサイユを訪ひわが眼ヴェルサイユを観んと欲するは

そが壮麗と光栄のためならず。

数知れぬ神となされて路易大王はなほも世にあり。然れば

われ何ぞ史伝の階段を極め昇るに及ばんや。

荒廃のいとも気高き眺めの中には、

美しき昔のさまの影もあはれや、

遊楽後を絶ちて唯だ変りなきその池水のみ、

昔の秩序と静寧の中に息ひたるこそ嬉しけれ。

という句がある。

自分が頻に芝山内の霊廟を崇拝して止まないのも全くこの心に等しい。しかしレニエエは既に世界の大詩人である。彼と我と、その思想その詩才においては、いうまでもなく天地雲泥の相違があろう。しかし同じく生れて詩人となるやその滅びたる芸術を回顧する美的感奮の真情に至っては、さして多くの差別があろうとも思われぬ。

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