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TORENDIA

冬の榛名山

本文約8,300字 ・ 読了時間 約17分

あらすじ(AIが作成しました)

冬の榛名山へ向かう一行は、伊香保温泉を経て榛名湖の絶景を堪能する。天神峠から広がる湖と山々の眺望に浸り、葛籠岩や鞍掛岩といった奇岩が並ぶ榛名神社周辺を巡る。その後、一行は水澤観音を経て、凍てつく冬の景色の中で迫力ある船尾瀧を観賞する。旅の途中で温泉地の風情や冬の山里の温もりを味わいつつ、同行者と共に榛名山周辺の自然の妙と天下有数の霊境を巡る紀行を綴る。

大町桂月

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大いに醉ひて、洋服着たるまゝにて、寢につきたるは夜の一時半、五時の出發には間もなけれど、少しでも睡らむと思へるなり。平生は宵つ張りの朝寢坊なるも、氣の張れる故にや、五時半に眼さめたり。眼ざまし時計を五時にかけ置きたるに、なぜ鳴らぬぞと、いぶかりて、よく見れば、鳴らぬもその筈や、五時にかけたるつもりなるも、大醉のあまりに、誤つて七時にかけたるなり。さるにても、三十分おくれたるのみにて、早く覺めたるこそ仕合せなりけれ。昨夜時間表を見て、五時五十四分新宿發の汽車あることを記憶す。それに乘らむとて、朝飯もくはず、起きたるまゝにて、飛び出でて新宿停車場にかけつけて、時計を見れば、五時五十分なり。

發車までにはまだ四分ありと喜ぶ間もなく、停車場の時間表を見れば、これも大醉の餘りの見そこなひにして、つい數字の上下を顛倒して、五時四十五分の發車を、誤つて五時五十四分の發車と思ひちがへたるにて、やれ/\、汽車は、正直に、時間通りに、五分前に出發したるなり。

次の汽車にのりて、田端に着し、前橋行の汽車に乘りかへむとするに、まだ三十分も待たざるべからず。仕方なしとあきらめて、ベンチに腰おろしけるが、渇を催して堪へがたきまゝに、停車場外に出づ。休息店多けれども、朝早ければ、いづこもまだ寢しづまりて、戸をあけさうにもなし。井戸をさがせど、見當らず。あゝ苦しや、醉醒めの水の味を知るものは、醉醒めに水を得ずして、人一倍の苦痛を感ずることもあるなり。

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