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TORENDIA

帽子箱の話

本文約23,700字 ・ 読了時間 約48分

あらすじ(AIが作成しました)

十六歳で両親を失い困窮した美貌の青年ハリー・ハートリーは、偶然の縁からトマス・ヴァンデラー将軍の秘書として働く。将軍は高価なダイヤモンドを所有し社交界で成功していたが、ハリーは軍務に馴染めず、将軍の美しい妻の私室に出入りして雑用をこなす日々を送る。ある日、夫人が兄と共謀してダイヤモンドを盗み出そうとする現場を偶然目撃したハリーは、将軍の怒りを買い、やがて騒動に巻き込まれて警察署へ引き立てられる運命をたどる。

スティーヴンスン

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十六歳まではある私立の學校で、それから後は英吉利がそのために有名になつてゐるある大きな學園の一つで、ハリー・ハートリー氏は、紳士としての普通の教育を受けた。その頃彼はもう勉強が厭でたまらなくなつてゐた樣子だつた。そして彼のたゞ一人の生き殘つてゐる親は、からだも弱く、頭もなかつたので、その後はつまらぬ、上品な遊藝の修業などに暇をつぶしても、別に故障を言ふものもなかつた。それから二年の後に彼は孤兒になつて、殆ど乞食のやうな身の上となつてしまつた。といふのは、彼は總ての活動的な勤勉を要する仕事には、その天性からいつても、自分の受けた教育からいつても、等しく不適當であつた。彼は情熱的な小唄などが歌へて、またピアノの伴奏なども相應に出來た。臆病ではあるが、上品な優男であつた。將棋に強い趣味を持つてゐた。そして生れつき、人の心を惹きつけるやうな容貌を惠まれてこの世の中に出て來たのであつた。髮の毛は紅く、顏は桃色で、眼は鳩のやうに優しく、いつも温やかな微笑を浮べてゐた。何となく氣持の好い優しさと、哀れつぽい樣子をしてゐて、ひどく柔順なそして慕ひ寄るやうな態度を持つてゐた。だが何れにしても、軍隊を指揮したり、閣議を董督したりする人物ではなかつた。

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