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TORENDIA

若い僧侶の話

本文約15,500字 ・ 読了時間 約31分

あらすじ(AIが作成しました)

倫理学と神学に精通する若い僧侶サイモン・ロールズは、牧師補の地位を求めながらスタックダヴ町の植木屋に下宿する。ある日、彼は偶然にも庭で美しい王のダイヤモンドを発見し、魔が差して自分のものにしてしまう。その後、偶然出会ったヴァンデラー将軍に対し、ダイヤモンドを換金するために大胆にも協力を仰ぐ。学問に生きたはずの僧侶が、思わぬ宝の所有をきっかけに、非日常的な冒険へと足を踏み入れていく過程を描く。

スティーヴンスン

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サイモン・ロールズ師は倫理學でも名の聞こえた人だつたが、神學の研究でも竝々ならぬ練達の士であつた。彼の「社會的の義務に關する基督教義に就て」と題する論文は、それが出版された當時、牛津大學で相當な評判となつたものであつた。また僧侶や學者の仲間では、若いロールズ氏が教父の權能に關する大著述――それは二折本になるといふ事だつた――を考へてゐるといふ事も一般に知られてゐた。だが之等の學識も、功名心に滿ちた計畫も、まだ彼を高僧の地位に陞らせる助けにはならなかつた。そこで彼は先づ何よりも牧師補の地位に有りつかうとしたのであつたが、その頃ふとした事から倫敦のある方面をぶらついてゐると、靜かで庭の眺めの面白い家に行き當つた。獨りで暮してしつかり勉強したいとも思ひ、また下宿料も安かつたので、かうして彼はスタックダヴ町の植木屋のレイバーンの家に住むことになつたのであつた。

一日に七八時間づゝ聖アンブローズだの、聖クリサスタムなどの事を研究した後で、毎日午後になると、彼はきまつて薔薇の花の咲き匂つてゐる間を、冥想しながら散歩する事にしてゐた。そしてかういふ折が一日の中でも最も良い考への浮ぶ時であつた。だが思想を求めてやまぬ眞面目な究理心も、解決を待つてゐる重大問題に關する心の昂奮も、世間の小さな動搖や、または世間との接觸から、いつもこの哲學者の心を引き留めて置くとは限らなかつた。そこでロールズ氏は、ヴァンデラー將軍の秘書役が着物をぼろ/\にして、からだからは血を流して、宿の亭主と連れだつてゐるのを見た時、また二人が顏色をかへて、何か聞かれるのを避けようとしたのを見た時、そして殊に秘書役が如何にもそしらぬ顏をして、自分の名を打ち消した時には、彼は忽ち聖者も教父も忘れ果てゝ、ありふれた強い好奇心を起したのであつた。

「私が間違つてゐる筈はない。」と、彼は考へた。「確かにあれはハートリー君だ。どうしてあんな慘めな樣子になつたのだらう? なぜ自分の名を打ち消したのだらう? そしてこゝの亭主のあの腹黒らしい男に何の用があるのだらう?」

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