このたび大阪
本文約2,700字 ・ 読了時間 約6分
あらすじ(AIが作成しました)
五月上旬から約一ヶ月間、大阪に滞在する著者が、当地のすし屋の接客態度や食文化について独自の視点で綴る。特におどり(生海老)を愛好する著者は、夜遅くなると品切れで横柄な対応をとる店に不満を抱く。一方で、黒門の屋台ですしを堪能する経験や、滞在中に訪れた様々な飲食店での食事風景を日記形式で記録し、食通としてのこだわりと大阪の食に対する苦言や愛着を率直に描き出す。
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五月上旬から、六月へかけて、梅田コマスタジアムで「道修町」出演のため、大阪に滞在すること、約一ヶ月。
大阪での僕のたのしみの一つは、おどり(生海老)を食うことである。酔後、冷たいすしの舌ざわりは、何とも言えない、殊に、おどりは、快適で、明朝の快便をさえ思わせるものがある。だから、大阪へ行ったら、おどりを、と、たのしみにしているわけ。
東京では、すし屋へ行っても、おどりを食わせる店は少いし、あっても活きが悪くて、大阪の如く、尻ッ尾が、ピチッピチッと動いたりしない。動いても、スローモーションで、グニャッグニャッと動く。
ところが、大阪のすし屋は、何うも生海老が早く売切れる。われわれ、夜の仕事が終って行くと、もう売切れです、と断わられる。
その断わり方が妙に生意気にきこえる。「相済みませんねえ、今夜はあいにく売切れましたんで――」というような、愛想のいい言葉は殆んど使わずに、どの店でも、きっと、おどりが食いたきゃあ、もっと早く来りゃあいいんだ、今頃来やがって、何を言っているんだというような感じで、「おまへんわ」位のことを、アッサリ言う。
「じゃあ、何時頃来りゃあいいんだ?」
ときくと、七八時迄に来て呉れなきゃあ売切れちまうと言う。馬鹿野郎、俺たちの商売、七八時に、すし食いに来られるわけがねえじゃねえか! と腹を立てる。
早く売切れるのが自慢のような口振りだ。然し、早く売切るってことは、仕込みがケチだってことを現わしているではないか、ちっとも自慢することはないんだ。
これは、ある一軒を指して言うんじゃない、戦後数カ年、僕は随分大阪のすし屋へ行っているが、何処へ行っても、この愛想なしと、売切れたのを自慢するような傾向がある。