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TORENDIA

『春の岬』序詩

本文約520字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

古く貧しい詩の数々を一巻にまとめあげた詩人が、序文の執筆を求められて綴った思いを収める。若き日の過ぎ去った年月と残された詩を振り返り、灯火の下でそれらを手に取りながら自らの拙さを省みる。かつて旅した国々の美しい風景や過ぎ去った日々への哀愁を抱きつつ、感情が薄れゆく中で遠い日の思い出を込めた一編の詩集として、自らの詩作に託したささやかな誠実さを読者へ伝える。

三好達治

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🎧 『春の岬』序詩 / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

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わが古きまづしきうたのたぐひここにとり集へてひと卷のふみをばなしつ、名づけて春の岬といふ、ふみのはじめに感をしるして序を添へよとは人の命ずるところなり、あな蛇足をしひたまふものかな、よしやつたなかるともわがうたのかずかずうちかへしわが感をのべたるものを、とてその夜わびしらに率然とおのれつぶやけるつぶやき

わが若き

十とせあまりのとしつきの

いつしかにはやすぎゆきて

あとこそなけれ

そこばくのうたはのこりつ

そのなかばいまここにあり

ながき夜の

燈火のもとにつどへて

二つ三つ手にとりあげて

ひるがへし見ればつたなし

よみかへすさへやものうし

宿かりのかつてやどりし

貝なりとこの貝がらの

童べさび

うづわの底をさしのぞけ

あるはただ小さき闇のみ

磯の香のもしやふとだに

わが鼻の頭かすめて

あればあれうれしからまし

なくもまたせんなしなどと

考へてひとりなだめて

茶をすすり煙草ふかしつ

はたうつうつと

かなしびのたへがたかりし

すぎし日をおもひかへしつ

(かのひとも老いたまひけむ)

山川のうつくしかりし

國々のさまをしのびつ

(錢もなき旅もせしかな)

讀む人よあはれと思へ

わがうたはそれらのかたみ

おほかたは情感うせて

おのれにはあぢきなけれど

ただたのむ

いささかのまことを陳べし

遠き日の思出はあれ

完

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