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TORENDIA

動員令

本文約1,200字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

真夜中の兵舎に響く非常呼集の号音。突然の動員下令に騒めく兵卒たちの前で、週番司令が出征希望者を募る。しかし、直立不動のまま微動だにしない兵卒らの胸には、かつて反戦を唱え軍法会議に縛された仲間が撒いたビラの言葉が鮮烈に刻まれていた。少数者の利潤のための殺人に抗い、怒りと葛藤を抱えながらも、戦争という現実と向き合わされる若き兵士たちの動揺と沈黙の抵抗を描く。

波立一

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🎧 動員令 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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耳の奥底に唐人笛飴屋の幼い想出

連隊の奴隷達は夢の中で枕を外した

激しい夜風とあれ狂う喇叭の号音

――非常呼集だ

丘の黒い建物は真夜中に眼ざめた

丘の兵隊屋敷は点々と燈火を燦めてゆく

不寝番は雀躍してバタバタ駆けまわった

息をきらしても叩き起すのは愉快だ

態あみろ 起きろ! 起きろさ

起きるよ…… うるせい!

週番司令あ誰奴だ?

俺あ 不服だぞお……

周章てて起きた初年兵の寝台の上に

不寝番は疲れ不貞腐れて寝込むだ

初年兵の左手は軍衣袴の釦をいじめ

一年兵の上靴を並べて匍いまわる

二年兵は不精不精起きあがる

二年兵は不機嫌にどなりちらす

この頓間野郎!

銃なんかもちだすなあ 火災だ

初年兵はビックリして直立不動の姿勢

けっ! この一銭五厘奴!

初年兵はオドオドして銃床に返す

再び 不動の姿勢で二年兵を注目する

早くでろ! 何をしてるか

階上廊下で兵器曹長が喚いている

隣の班からぞろぞろ押しあえ犇めく

不寝番は微かな鼻鼾をたてている

兵舎内の燈火をよぎり人影が乱れる

真夜中の営庭に約二千の兵員が並んだ

寒い…… 日給十八銭も辛いな

非常呼集なんて勿体つけるなあ真平御免よ

第二中隊 気をつけい……

改った兵器曹長の号令が鼻毛を擽ぐる

軍刀をがちゃつかせて週番司令が来た

連隊週番下士が弓張提灯で随行だ

第二中隊 現在百三十八名異状なし

報告を鼻でうなずき週番司令は隊列を巡る

こらッ きさまの睾丸類は満開じゃ

寝呆奴! 軍帽を忘れたんかあ

廻れ右いッ これは尻尾か ああ?

その兵! 阿弥陀に被っとる ああ?

休め!

気をつけい!

休め! ハキハキしろ!

気をつけい!

命令を達する

当連隊に動員下令 要員の出発は十九日だ

瞬間! 兵卒達の後頭部が異様に騒めく

(まさか? 俺は行くまい……)

休め……

気をつけい!

諸子はみな忠良類なき陛下の臣だ

出征希望の者は三歩前へ出ろ!

兵卒達は直立不動のまま頑強に応えぬ

深夜の土に凍てついたか動かなかった

兵卒達の胸に生々しい予告が蠢めく

予言の主は軍法会議に縛されているのだ

奴は莞爾とビラを撒き手渡した

この手はビラを掴みこの眼は読んだ

白襟に縛され黒襟に衛られてゆく朝

奴のものいえぬ眼は俺らの心臓を刺した

ビラは判然と語った

戦争は少数者の利潤を守る殺人行為だ

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