本文へ移動
TORENDIA

冬の夜の歌

本文約250字 ・ 読了時間 約1分

※本文が短いため「あらすじ」は省略いたします。

森川義信

速度
🎧 冬の夜の歌 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 1

私は墜ちて行くのだ

破れた手風琴の挽歌におくられて

古びた天鵞絨の匂ひに噎び

黝い霧に深く包まれて

ゆふぐれの向ふへと私は墜ちて行くのだ

今はこの掌に触れた蒼空もなく

胸近く海のやうに揺れた歌声も――

どうしたのだ私の愛した小さくて美しかつたものよ

小鳥たちよ 草花たちよ 新月よ 青い林檎よ

しきりに眩暈がおしよせる心には

悔恨が一本の太い水脈となり――

陰鬱な不協和音が青く戦き

狂つたヴイオロンが駈け廻り

すべては白蝋石の上に痙攣し

腐蝕した玻璃の破片が暗黒の空間に飛散するのだ

ああ 遂に今 若い肋骨さへ噛み穿つ

寒々と冴えた牙の戦慄よ

完

森川義信の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本