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TORENDIA

衢路

本文約490字 ・ 読了時間 約1分

あらすじ(AIが作成しました)

船乗りを思わせる軽装で街を彷徨ったかつての夜の記憶を回想し、友人との親密な交流や街の灯りの美しさを追憶する詩である。現在の街に立ち込め始めた冷たい霧の中で、かつての美しい唄声の変容に直面した主人公が、過去の残像と向き合いながら、灰色の街路で明日を見出そうと葛藤し、ボードレールへと思いを馳せて昏迷の中を歩み続ける姿を綴る。

森川義信

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🎧 衢路 / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ

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友よ覚えてゐるだらうか

青いネクタイを軽く巻いた船乗りのやうに

さんざめく街をさまよふた夜の事を――

鳩羽色のペンキの香りが強かつたね

二人は オレンジの波に揺られたね

お前も少女のやうに胸が痛かつたんだろ?

友よ あの夜の街は新しい連絡船だつたよ

窓といふ窓の灯がパリーより美しかつたのを

昨日の虹のやうに ぼくは思ひ出せるんだ

それから又 お前の掌と 言葉と 瞳とが

ブランデーのやうにあたたかく燃えた事も

友よ お前は知らないだろ?

ぼくが重い足を宿命のやうに引きづつて

今日も昨日のやうに街の夜をうなだれて

猶太人のやうにほつつき歩いてゐる事を

だが かげのやうに冷たい霧を額に感じて

ぼくははつと街角に立ち止つて終ふのだ

そしてぼくが自分の胸近く聞いたものは

かぐはしい昨日の唄声ではなかつたのだ

ああ それは――昨日の窓から溢れるものは

踏みにじられた花束の悪臭だつたのだ

やがて霧は深くぼくの肋骨を埋めて終ふ

ぼくは灰色の衢路にぢつと佇んだまま

小鳥のやうに 昨日の唄を呼ばうとする

いや一所懸命で明日の唄をさがさうとする

ボードレエルよ ボードレエルよ と

ああ 力の限りぼくの心は手を振るのだつたが

――又仕方なく昏迷の中を一人歩かうとする

完

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