本文へ移動
TORENDIA

ベートーヴェンの生涯

本文約5,400字 ・ 読了時間 約11分

あらすじ(AIが作成しました)

ロマン・ロランによるベートーヴェンの生涯と音楽研究を論じる一冊。少年時代から音楽を心の師と仰いだ著者が、歴史的な考証と芸術的な創造性を結合させ、自身の魂の伴侶として生涯をかけて向き合った作曲家の精神世界を描く。音楽形式の背後にある内生命のリズムや、形式と内容が一体となって放つ輝きを分析し、作品を通じて生き続ける一個の人間としてのベートーヴェンの姿と、その音楽が時代を超えて普遍的な意味を持ち続ける根源を明らかにする。

片山敏彦

速度
🎧 ベートーヴェンの生涯 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 8

ロマン・ロランのベートーヴェン研究について

ロマン・ロラン(Romain Rolland)にとってはその少年時代以来、ベートーヴェンは最大の魂の師であった。「生の虚無感を通過した危機に、私の内部に無限の生の火を点してくれたのはベートーヴェンの音楽であった」とロランは『幼き日の思い出』の中に書いている。二十三歳のときパリの母校高等師範学校の留学生としてローマに行き、当時七十歳をこえていたドイツの老婦人マルヴィーダ・フォン・マイゼンブークと精神的な深い交誼をむすんだときに、ベートーヴェンの音楽への理解はロランにとっていっそう深まるとともにいっそう意味のあるものとなって来た。マルヴィーダはヴァーグナーとニーチェとリストとの親友であった。彼女は若いフランス人ロランのためにゲーテやシルラーのドイツ文学に通じる精神の扉をひらいてやった。当時すでに立派なピアノ演奏の技術を身につけていたロランのために彼女は一台のピアノを借りた。昼間ヴァティカンの書庫の中で史学の文献書類を調べる仕事に疲れたロランはほとんど毎夕マルヴィーダの家――その数年前まで存命していたフランツ・リストが、そこに来て魔力あるアルペジオを掻き鳴らすこともしばしばであったその家を訪れて、バッハやヘンデルやベートーヴェンを弾いた。ロランの演奏を聴いてマルヴィーダは書いている――

「ベートーヴェンの世界霊を私は享受した。そこでは、この世に生まれた者の最も深い悲しみが、神に近い精霊らの最もけだかい慰めと浄福とに融け合って表現せられる。」(一八九〇年四月十二日および二十四日)

「心の最良の瞬間に心眼の前にうかび漂い、普通の現実の上高く心を高めるところの或る完璧な現実の予感と、欠陥の多い現実世界とを真に和解させるものは音楽である。人類のあらゆる偉大な教師らは音楽を必要とした……宇宙のリズムについてのピタゴラスの考えは、実際何と美しくけだかいものであったか!」(『一生涯の夕暮』より)

片山敏彦の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本