恋と十手と巾着切 新興映画 (サイレント)
原作並脚色 阿古三之助
(山中貞雄)
監督 広瀬五郎
撮影 三木 稔
キャスト
巾着切跡見ず三次 河津清三郎
御用聞てっきり鉄五郎 片桐恒男
茶屋娘 お絹 望月礼子
弟 勝坊 鈴木勝彦
浪人 鵜飼吾郎 吉頂寺光
(鵜飼三四郎)
相良伝兵衛実は棚倉伝八 東良之助
(相良伝右衛門実は棚倉伝八郎)
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T「てっきり彼奴と睨んだ眼に狂いのあった試しがない」(O・Lして) T「御用聞の鉄五郎、人呼んでてっきり鉄」
S=町角(朝まだき) 御用聞のてっきり鉄、朝の散歩でブラブラやって来て、カメラの前で、立止って声をかける。 T「三次、三次じゃ無えか?」 呼ばれて振り返った巾着切跡見ず三次。 二人は仇敵同士だが兄弟の様に仲がいいのである。 鉄五郎は三次に、 T「近頃決って朝早く出て行くが」 と言って、ウサン臭そうに、 T「毎朝毎朝一体何処へ行くんだい?」 と訊かれて三次澄ました顔で、 T「向う横丁のお稲荷様へ朝詣り……」 「えッ!」と鉄五郎呆れて「お前が?」と言う。 三次が、「旦那 T「神信心って奴もやって見るとまんざら悪かァ御座んせんね」 と言って「急ぎやすから御免なせえ」と其の儘スタスタと去る。見送った鉄五郎、変に思ったが、其の儘三次とは反対の方向へ去る。
S=附近 鉄五郎やって来て立ち止った。 「待てよ」と考える。 T「てっきり彼奴」 と独り言、 T「朝ッぱらから一稼ぎしてやがるかも知れ無えぞ」 其辺で鉄五郎クルッと踵を反して走り去る。
S=稲荷神社境内 (茶店は腰掛茶屋である。つまり日中だけの営業で、日が暮れたら店を片付けて住居に帰る) 三次の奴が境内の茶店に腰をかけて嫌に嬉し相にしている。 茶店の娘のお絹が朝早いので、お客がない鬱晴らしに三次と世間話をしている。