陣中日誌(遺稿)
本文約7,900字 ・ 読了時間 約16分
あらすじ(AIが作成しました)
昭和十三年、映画監督の山中貞雄が従軍にあたり遺した日誌。出征前の動揺や準備の様子から、運送船での移動、北支での行軍、前線部隊への編入といった戦地での日々を綴る。あわせて映画制作への情熱が断片的に記されており、兵士たちの日常や戦争の風景の中に、自身の創作案や映画人としての思索を交えて描かれる。
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遺書
○陸軍歩兵伍長としてはこれ男子の本懐、申し置く事ナシ。
○日本映画監督協会の一員として一言。 「人情紙風船」が山中貞雄の遺作ではチトサビシイ。 負け惜しみに非ず。
○保険の金はそっくり井上金太郎氏にお渡しする事。
○井上さんにはとことん迄御世話をかけて済まんと思います。 僕のもろもろの借金を(P・C・Lからなるせからの払ッて下さい。) 多分足りません。そこ、うまく胡麻化しといて戴きます。
○万一余りましたら、協会と前進座で分けて下さい。
○最後に、先輩友人諸氏に一言 よい映画をこさえて下さい。以上。
昭和十三年四月十八日 山中貞雄 [#改ページ]
従軍記
×・二八―― 小津氏曰くの「靖国神社の門鑑」なるものを戴く。 小判型の真鍮に 歩× 歩×補 番六一と刻ンである。
[#「註」略]
×・30 二日の出立が四五日延期となる。 月の七日の旅立ちとでも決まれば、我亦何をか言わンやである。 雨、しとど降る。
×・五 遂ニ×月「七日ノ旅立チ」ト決定スル ××ニ一泊シテ八日乗船トノ由。
MEMO セットは花園駅を後景ニシテ前景の宿ハ稲荷駅前ノ玉屋ヲモデルトスル事、宿デナク駅ノ商家(商売ヲ考究スル事)デモヨシ
「おッ母アがお寺の和尚さんに頼ンで、写真の裏にこの通り俺の戒名書いて……」
エフェクト
万歳の声、汽車のボー
○――少しキツクなる恐れあり止めても可 朝 お袋さんが訪れる 村で鼻が高い話 痔はどうかの話 息子クサル
◎ラスト 戦地からの手紙―― ボーゼストの、手と私の殺した男の、手とを再考スル
[#「註」略]
×・七 遂に七日の旅立ちです。 子供を背負ッて帯を除して、兵隊の横を小走りに行く女の人を見る。 駅頭の混乱 ××着(×××荷物駅)×町を行進する。 京都の駅前でバンザイを叫んだ人と××の街頭でバンザイを叫ぶ人と顔色が違う。 叫ぶ人の悲劇 叫ばれる奴の悲劇。 喜劇かもしれない。 前進座の宮川氏来る。
[#「註」略]