TRENDIA CLASSIC
螽※[#「虫+
斯」、第3水準
1-91-65
]の記
室生犀星
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きりぎりすは夜明けの四時になると鳴き止む。部屋のなかに籠を置いて雨戸を閉めてあっても、四時になるとぱったり静かになる。なぜかというと、四時には明け方の微かな明りが漂いはじめるからだ。それがきりぎりすには判るらしい。夕方から鳴きはじめるが、夜更けの一時から二時の間にしききりなしに鳴く。息をつかずに僕のかぞえた数では、百十一遍続けさまに鳴いていた。つまり、きりきりきりという口調をくりかえすのである。しかし僕のいうのは昼間鳴くきりぎりすではない。だから信州では夜なくのを「きす」といい、昼間なくのを「本ぎす」といっていた。
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