冬の庭
本文約2,700字 ・ 読了時間 約6分
あらすじ(AIが作成しました)
冬の庭が持つ厳格さと深い寂しさを綴る。四季の終わりである冬は庭の手入れの成果が露になる季節であり、霜で荒れた土や庭木の根元の表情、雪がもたらす寂寞とした情景を詳細に観察する。また、梅擬や茶の花などの植物が示す冬ならではの美しさ、松竹梅が織りなす三樹交契の精神性に触れ、庭の隅から整えることで中心を際立たせるという、庭作りの作法と思索を記す随筆。
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冬になると庭を眺める時がすくない。霜で荒れた土の上に箒をあてるといふわけにゆかないから、秋晩くに手入れを充分にして置かなければならない。この手入れさへ怠らなかつたら冬ぢゆうそのままにして置いてもよい。木の葉なぞも綺麗に掃き取つておけば、乱れるといふことはない。冬の庭の味ひの深いのは何といつても霜で荒れた土がむくみ出し、それが下ほど凍えて、上の方が灰のやうに乾いてゐる工合である。苔は苔のままむくみ上つてゐるところに、何とも言へぬ深い寂しみが蔵はれてゐて、踏んで見るとざつくりと土が沈む。乾いた灰ばんだ何処か蒼みのある土が耐らなく寂しい。掘り出しものの朝鮮の焼きもののやうな色と粉とから成り立つてゐるからである。
冬は庭木の根元を見ると、静かな気もちを感じさせる。灰ばんだ土へしつかりと埋め込まれて森乎としながら、死んでゐるやうな穏かさをもつてゐるからである。庭を愛するひとびとよ、枝や葉を見ないで根元が土から三四寸離れたところを見たまへ。さういふ庭木の見かたもあることを心づいたら、わたくしの言ふことはないのである。
冬は四季を通じての庭のはらわたを見せるときである、庭の持主の心づかひが此の季節にすつかり表はれ、春夏秋の手入れや心配りの程が解るやうである。春夏秋の怠りもまた冬になると露れるのである。池水がよごれて居れば氷が美しく見えない。木の掃除が行きとどいてゐなければ枯葉を乱すおそれがある。