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TORENDIA

普羅句集

本文約7,400字 ・ 読了時間 約15分

あらすじ(AIが作成しました)

富山への移住を人生の大きな転機とする前田普羅が、その前後の俳句生活をまとめた句集。前半には横浜時代を中心とした瑞々しい狂熱の句を、後半には富山の自然に身を任せ、静謐な心境で詠んだ句を収録する。本書は、芸術という新宇宙を創造するために、修羅の道を歩みながらも求めた俳句の軌跡を綴るものであり、作者が多様な学問や経験を経て辿り着いた、文学への愛着と越中の自然に囲まれた豊かな生活を内包する作品である。

前田普羅

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序

説明するまでもなく、此の句集を繙かれる時、一句一句に就て私の生活が見出される事であらう。

今日までの私の俳句生活は二つに分たれる、富山移住前と富山移住後とに。富山移住前の生活は横浜に於ける生活である。何故に其れを横浜時代と云はないか。私の俳句生活その他にも重大なる転機を与へた富山移住を記念するために、しばらく横浜時代の文字を割愛し、心に秘めて愛して居ようと思ふから。

富山移住前の句は上巻に収めた。下巻は必然的に富山移住後の句が集められて居る。上巻を見ると、世路の術にも、心の鍛錬にも幼かつた私の狂はしき姿を見る、と云つて、下巻には、世路の術心の鍛錬に行き届いた時代の句が収められたと云ふのではない。只、静かに静かに、心ゆくまゝに、降りかゝる大自然の力に身を打ちつけて得た句があると云ふのみである。句を誇るのでなく、心を曝らけ出すのに過ぎない。物ほしさうな世路の術と云ふ事も、心の鍛錬なぞと修道者めいた言葉も忘れ果てた境に生れた句を収めたのみである。

我等には教へられた宇宙があつた。之れに反し芸術の道は更に新らしい宇宙を創造せんとするワザである。小さい人間が、自の心と身を安定せしめ得るの新宇宙を求むる努力は、げになやみ多き芸術の道であつた。うめき、号泣、肉のさける音、骨の砕くる響、それ等は救を求むるの前ぶれではない。直ちに芸術にたづさはる者の力声である。歓喜の声である。

何故に、或る人々は此の修羅の道を選ばねばならなかつたか。

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