かたつむり
本文約3,600字 ・ 読了時間 約8分
あらすじ(AIが作成しました)
別荘に残されたトゥロットは、庭のバラの木にいるかたつむりを見つける。家庭教師からバラを害する軟体動物であると指摘され、処分を迫られたトゥロットは、命を奪うことの是非について深く悩み葛藤する。他者への配慮や生命の価値という道徳的問いに直面した末、思いがけない行動をとることで自らの役割を果たそうとする少年の困惑と心情の推移を描く。
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一
トゥロットのお母ちやまは、朝、いろんな人たちと一しよに、馬車でそとへお出かけになりました。ド・ヴレーさんといふよそのをぢさまが、馬のたづなをとり、もう一人のをぢさまがラッパをならして、みんなでたのしさうに出ていきました。トゥロットは、ちひさくて、足手まとひになるので別荘にのこされました。
トゥロットは、女中のジャンヌと二人であそぶつもりでゐたのですのに、お母ちやまはトゥロットがたいくつするだらうとおもつて、先生のミスに、来てやつて下さいとおたのみになつたものです。トゥロットは、あゝあと、がつかりしました。お母ちやまは、トゥロットにさうだんもなさらないで、いやな人をおよびになるのですからたまりません。
ミスはお庭のおくのべンチにこしかけて、偉大なお鼻の上にめがねをのつけて、顔中のすぢ一つさへうごかさないで、自動器械のやうに、さく/\とご本をめくつてゐます。トゥロットは、ミスにしかられないやうに、何かわるくないことをして、時間をつぶさなければなりません。それでさん/″\かんがへて、けふはお庭の中をくはしく見て歩いてみようとおもひつきました。
今は、庭もかなりあれてゐて、砂利だの、やせた芝のごみだの、木のきれはしなぞが、ちらかつたりしてゐますが、でもまん中どころにあるバラの木だけは、人の目を引きつけないではおきません。とてもすばらしい、いゝバラの木で、とき/″\花がさきます。けふも、ちようど一つ、大きくさきひらいてゐます。トゥロットは、その花をうつとりと、いろんな方がくからながめました。それは何ともいへない、きれいな花です。
と、そのうちに、きふにトゥロットの目は、大きくまるくなつて、じつと一ところを見すゑました。ほう、こはいものがゐる。バラの葉の上にかたつむりがのそ/\うごいてゐます。おゝ、いやなやつ。うしろにきら/\したあとをひいて、頭を右にまはしたり左にまはしたり、つのを出したり、ひつこめたりしてゐます。ちつとも、ゑんりよなんかしてゐやしません。トゥロットは、しばらく、じつと見つめたのちに、するどい声をたてゝミスをよびました。
「ミス、来てごらんなさい。」