TRENDIA CLASSIC

俳句への道

高浜虚子

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おやをもり俳諧をもりもりたけ忌  虚子

もりたけ(荒木田守武) 室町末期の俳人・連歌師 天文十八年八月八日没 [#改ページ]

二、三年来『玉藻』誌上に載せた短い俳話を集めて本書が出来た。されば「玉藻俳話」とでも題する方が適切かも知れぬ。いずれにせよ、私の信ずる俳句というものは斯様なものであるという事を書き残して置くものである。

往年岩波茂雄君から、従来発行し来った岩波文庫の他に今度岩波新書を発行しようと思う、それについて私に「俳句への道」という一篇を執筆してもらいたい、という話があった。私は、出来たらば書いて見よう、と約束した。その後十年、二十年と月日が経って、茂雄君は亡くなってしまった。が、最近また改まって岩波新書として「俳句への道」を書いてもらいたいという話があった。昔茂雄君の依嘱に応え得なかったことを心残りに思っておったところである。その頃『玉藻』に載せはじめた俳話類を纏めたものでよろしければと言った。それでも宜しいとの事であった。それから一、二年を経過して、漸く書物になるだけの分量になった。それに「俳句への道」という題を附することにした。

この書に輯めたものは私が従来しばしば陳べ来ったものをまた言を改めて繰り返したものに過ぎぬ。私の俳句に対する所信に変りはない。しかし時に応じ物に即して筆を採ったものであるから、今の俳句界に対して無用の言とはいえないであろう。

昭和二十九年十月二日 鎌倉草庵にて 高浜虚子 [#改丁]

俳句への道

私等は、日本という国ほど景色のいい所は世界中ないような心もちがします。こういうと世界の国々を知っている人は、そんな事はない、何処にはこういう景色がある、彼処にはああいう景色がある、それを知らないで、世界を充分見もしないで、ただ日本だけ見て、そんな独りよがりをいうのは、いわゆる井の中の蛙のたとえで、物知りには笑われるから、そんな事をいうのは慎んだがよかろうというに極っています。

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