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TORENDIA

漱石氏と私

本文約64,700字 ・ 読了時間 約130分

あらすじ(AIが作成しました)

松山の中学校教師であった夏目漱石と高浜虚子の交遊、および二人の京都での体験を綴る。学生時代からの記憶や手紙を交え、漱石の気取らない人柄や執筆活動の様子を描く。京都では宿を共にし、一力で過ごすなどして文学の着想を得る過程を振り返る。著者による追憶を通じて、文豪の素顔と当時の文壇の空気を伝える。

高浜虚子

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序

漱石氏と私との交遊は疎きがごとくして親しく、親しきが如くして疎きものありたり。その辺を十分に描けば面白かるべきも、本篇は氏の書簡を主なる材料としてただ追憶の一端をしるしたるのみ。氏が文壇に出づるに至れる当時の事情は、ほぼ此の書によりて想察し得可し。

大正七年正月七日

ほととぎす発行所にて 高浜虚子 [#改ページ]

漱石氏と私

一

今私は自分の座右に漱石氏の数十本の手紙を置いて居る。近年はあまり人の手紙は保存することをしないけれども、十年前頃までは先輩の手紙の大方保存しておいた。それは一纏めになって古い行李の中に納められてある。今度漱石氏が亡くなったのに就いて家人の手によって選り出されたものが即ち座右にあるところの数十通の手紙である。まだ年月の順序でそれを排列することもしないでいるのであるが、ちょっと手にとってみたところでは大方漱石氏が「猫」を書くようになってから以来一両年間の手紙で、それ以前の手紙は極めて少いようである。そうして漱石氏が朝日新聞に入社してその紙上以外に筆を執らぬようになってから後はまた著しくその数を減じている。

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