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TORENDIA

魯迅さん

本文約8,100字 ・ 読了時間 約17分

あらすじ(AIが作成しました)

内山完造による本作は、上海の内山書店で親交を深めた魯迅との十年間にわたる交流を綴る。書物への愛着や真正直な人柄、許広平との家庭生活、弟子の窮状を救う姿など、著者の目から見た素顔を描く。また、政治的圧迫の中で中国の現状を「馬々虎々」という病と捉え、日本人の真面目さを特効薬と説いた独自の視点や、死の間際まで自身の信念を貫いた晩年の様子を詳述し、その偉大な教育者としての側面を回想する。

内山完造

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私が初めて魯迅さんに会ったのは一九二七年の十月五日であったことは魯迅日記の次ぎの記入ではっきりと解ったのです。

五日雨上午寄静農 霽野信 寄季市信 寄淑卿信 欽文来 伏園 春台来并贈合錦二合 午邀欽文 伏園 春台三弟(建人)及広平往言茂源飯 訪呂虞章未遇 往内山書店買書四種四本十元二角下午往三弟寓 夜小峰邀飯于全家福(菜館)同坐郁達夫 王※[#「日+夬」、U+23161、172-7]霞(郁夫人)潘梓年 欽文 伏園 春台

小峰夫人 三弟及広平 章錫 夏尊趙景深 張梓生来訪未遇 夜朱輝煌来

とある。実は魯迅さんは広東の中山大学の文学部長であったのだが、蒋介石の乱暴にとても堪えられないで脱出して上海へ来られたのであって、十月三日に着いて共和旅館に宿泊中であったのだが、それからは八日、十日、十二日と店へ来られたらしい。しかも十二日には二度も来たようです。しかし私のぼんやりは、ただのお客様として扱っておったのですが或る時買った本を東横浜路景雲里二十三号の宅へ届けて呉れといわれた時にお名前はと聞いたら周樹人といわれたので、私はビックリして

「おやあなた魯迅さんですか」

というた。これからが私との十年の親しい交りとなったのです。

その頃魯迅さんは中国作家として或る地位をもっておられたのですネ。私が魯迅という名を知って居ったのですからネ。

私は今もいうように日本の本を売っておったのです。魯迅さんが毎日のように来られて何冊かの本を買って帰られるのを見ると、先生が永らく日本の書物に飢えて居られたことが解りますので私はとても嬉しかったですよ。

だから魯迅さんの体内には随分たくさんの日本の文学、思想、哲学等が蟠居していたことと思いますネー。これは或るいは私の自惚れかも知れませんが、何日も魯迅さんのことを話しているとそんなことが頭に浮んで来て一人で微苦笑することがありますネー。

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