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TORENDIA

決闘

本文約5,700字 ・ 読了時間 約12分

あらすじ(AIが作成しました)

作文の時間に雑種の愛犬を侮辱されたと感じた次郎は、同級生の森川と反目する。二人は長距離走で意地を張り合い、ついにはそれぞれの犬を戦わせる決闘を約束する。放課後、原っぱに連れ出された犬たちは争うことなく互いに親愛の情を示す。それを見た二人は自分たちの狭量さを恥じ、互いに謝罪して友情を取り戻す様子を描く。

新美南吉

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🎧 決闘 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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一

「犬」という字が一字きり大きく黒板に書かれてあります。先生はその前を右へいったり左へいったり、ときにはそこから生徒たちの方へおりてきて、生徒たちがせっせと作文を書いているのをのぞいたりします。みんなは頭を動かし動かし犬のことを作文に書いています。家でかっている犬のこと。かわいそうなのら犬のこと。どこかの犬にほえつかれたこと。それぞれかわったことを書いています。

いちばんうしろの、えんぴつけずりの前では酒屋の次郎君がこつこつと書いています。先生が書く前になんども字を美しくきれいに書かねばなりませんと注意なさったにもかかわらず、ごてごてと汚く書きこんでいます。けしゴムがそこにあるのに書きちがえると指の先につばをつけてこすってしまいます。とてもめんどうくさくてけしゴムなんか使っていられません。というのは次郎くんは世界中で一ばんすきな「西郷隆盛」のことを書いているからです。

「西郷隆盛」ってあの大英雄のことでしょうか? そうではありません。それは次郎くんの作文を読めばわかります。

「ぼくんちの犬は西ごうたかもりという名です。もうせんお父さんがあさがやの西川さんちからもらってきました。西川さんちには六ぴきも生まれてみんなごうけつの名をつけました。秀吉、ナポレオン、ばんずいん長べえ、とうごう大将、猿飛佐助、西ごうたかもりであります。それでお父さんは西ごうたかもりをもらってきました。西ごうたかもりはぼくが大すきです。ぼくが西ごうたかもりとよぶと走ってきます。ぼくがボールを投げてやるとひろってきます。そっとくわえてくるのでボールははれつしません。ミットでもひろってきます。靴でも帽子でもなんでもぼくが投げてやるとひろってきます。それでそっとくわえてくるのでやぶれません。また西ごうたかもりはじっさいつよい。ほかの犬がきても西ごうたかもりがううとうなるとこそこそとにげていってしまいます。めったにわんとなきません。わんわんとよくなく犬はよわんぼであります。それで西ごうたかもりが番しているのでぼくんちはごうとうがはいっても大丈夫です。」

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