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TORENDIA

アメリカの旅

本文約1,600字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

昭和二十四年七月六日から三カ月間、アラスカ、米本国、カナダを廻った旅行記。航空機を駆使した効率的な移動により、広大な距離を短時間で往来するアメリカ流の生活圏を体験する。各地の大学や研究所を巡る過密な行程の合間に、技術がもたらす時間と空間の変容や、それによって形作られるアメリカ人の世界観と能率的な社会構造を考察する。自身の旅程を交え、移動速度が距離観や世界観を変えるという視点から現代のあり方を捉え直す。

中谷宇吉郎

速度
🎧 アメリカの旅 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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昭和二十四年七月六日に羽田を立って、三カ月の予定で、アラスカ、米本国、カナダを廻って、十月五日に、南方空路経由、羽田へ帰り着いた。その間、わずか九十日の間に、十年前ならば、一年以上もかかるくらいの旅行をして来た。

そういうことが出来たのは、ほとんど全部飛行機を使ったからである。飛行機というものが、ほんとうに実用になったことがよく分った。現在では、東京からアメリカまでの距離が、東京札幌間の距離よりも近くなってしまったのである。

初めはリノのネバダ大学に落着いて、そこで旅程を立てて貰って、二、三カ所廻って来るくらいの暢気な気持で出かけた。ところが着いてみたら、私を招いてくれたチャーチ博士が、既に全米の各大学や研究所に打合せをしておいてくれたので、とんでもない大旅行になってしまった。

地図で見られるように、ちょいちょいと次の大学へ寄るといっても、たいていは東京から札幌までくらいの距離である。しかしそれが現在の飛行機だと、二時間半くらいのものである。それで例えば、札幌の大学に夕方四時までいて、ホテルへ帰って夕食をすませ、六時に飛行場へ行くと、八時半にはもう東京に着いている。ホテルへ行って、風呂にはいって少し仕事をして寝ると、翌朝はもう八時から東京の大学へ顔を出すことが出来る。旅行の時間というものをほとんど旅程の中に入れなくてもいい。疲労の点も汽車と較べれば、全然問題にならない。

ちょっと面白い話は、TVAを見るために、ナックスヴィルへ行くというちょっと前に、ミネアポリスのミネソタ大学から手紙が来た。ここの大学で雪の綜合研究所を作ることになって、今準備をしている、君がアメリカへ来ていることを最近知ったので、帰る前にちょっと寄って貰いたい、相談したいことがあるからという意味のことが書いてあった。私は初めナックスヴィルから、ラスヴェガスへ飛んで、ボルダー・ダムを見て帰るつもりだったが、その手紙を見て、ちょうどいい機会だから、ミネアポリスへもちょっと寄ってみようという気になった。それですぐ承諾の返事を出した。

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