本文へ移動
TORENDIA

女性史研究の立場から

本文約5,100字 ・ 読了時間 約11分

あらすじ(AIが作成しました)

女性史研究者である著者が、日本歴史における女性の地位と家族制度の変遷を論じる。本書は、上代から続く母系制や招婿婚の歴史的事実を再評価し、現代まで続く家父長制が必ずしも原初からの伝統ではないことを実証する。さらに、古代日本の女性が高地位を占め、政治や祭祀、文学において重要な役割を担っていた点を古典から解明し、偏った史観を批判しながら、女性の視点を取り入れた新たな日本史の構築を提唱する。

高群逸枝

速度
🎧 女性史研究の立場から / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 7

学問の自由1

日本歴史の新しい検討ということがもとめられている。女性史の一研究者として、私はこの際若干の感想をのべてみたい。わが国の歴史研究が狭く浅く、政治史にかたよっている点は、すでに多くの人からいわれてきたとおりであるが、敗戦を機会にそれらのことはむろん反省せられねばならない。

根本の問題は学問の自由、真理の探求であるが、学者がつねに政治的制圧をうけることはまぬがれえない。

私の経験からいえば、女性史なども、なにか社会や男性に反抗する危険思想ででもあるかのように思われがちで、ずいぶん不愉快な圧迫や俗見とも戦わねばならなかった。

私は、昭和十三年に、足かけ八年の労作になる女性史第一巻を「母系制の研究」として世に出した。この題目など、とくに、現行家族制の父系思想からみて、好ましくない印象をもたれたことも、うなずけないことではない。私は江戸時代の儒者たちが、天照大神の男性説を唱えねばならなかった心持がいまだに残って学問研究を妨げているのを残念に思う。

上梓に際し、出版書肆からは、わざわざ当局の注意事項が伝達された。それはかなり非常識なものであった。

学問の自由について、なお一つ付け加えたいことは、歴史家自身についてである。わが国の歴史家には、独立心がとぼしく、研究の方法のごときも、とかく外来の史学や方法論をそのまま尺度としようとし、みずからそれを生み出そうとはしない場合が多いといわれる。したがって演繹的、説明的な態度が多くとられ、帰納的、実証的な方法は一般に欠けているという。このことは自省されねばならないと思う。

史観の革新2

女性史は、まったく新しい分野を開拓するものであって、この研究が進められて行けば、当然従来の史観の誤謬を訂正する部分も多いはずである。

私もこの研究に専念するようになって、まだ十五、六年ぐらいにしかならないけれども、それについて気づいている事例はすくなくない。私は第一巻「母系制の研究」を出してから、第二巻「招婿婚の研究」に没頭し、まだ成稿の運びにいたっていないが、この招婿婚の問題にしても、考えさせられることが多い。

同じジャンルの朗読つきの本