本文へ移動
TORENDIA

余はベンメイす

本文約5,800字 ・ 読了時間 約12分

あらすじ(AIが作成しました)

情痴作家という世評に対し、弁明を求められた著者が、作家の社会的責任や文学のあり方を論じる随筆。自身は弁明の性質を否定し、作品は書き手が自我の責任においてつくるものであると主張する。また、いわゆる猥雑とされる文学や肉体への関心を抑圧する風潮を批判し、人間は自らの生活を本能や感情をも含めてつくっていくべきだと説く。真理を探究し続ける不安定な生を肯定しながら、文学の本質と作家としての矜持を綴る。

坂口安吾

速度
🎧 余はベンメイす / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 8

先日朝日評論のO氏現れ、開口一番、舟橋聖一のところには日に三人の暴力団が参上する由だが、こちらはどうですか、と言う。こちらはそんなものが来たことがない。来る筈もないではありませんか。

東京新聞のY先生(なぜなら彼は僕の碁の師匠だから)が現れての話でも、世間ではもっぱら情痴作家と云ってますが、御感想いかが、と言う。すると、それから、西海と東海と東京と三つの雑誌と新聞から同じようなことを言ってきて、私の立場に就いて、弁明しろと言う。弁明など考えたこともないから、しろと云っても、無理だ。

朝日評論のO氏も弁明を書けという。まるでどうも、私が東京裁判情痴部というようなところへ引きだされて目下訊問を受けているようにきめこんでいる様子で、私も恐縮したが、まったく馬鹿げた話である。

こうきめつけられては、てれてニヤニヤする以外に手がなくなって、そうかね、私は情痴作家ですか、などと云うと、知友の筈のY先生まで、舟橋・織田も情痴作家とよばれることを厭がりますね、などと取りすましている。とりつく島がない。

坂口安吾の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本